【概要】 企業が統合報告書やHRリポートなどで人的資本の情報開示を行う際のガイドラインとなる国際規格。「コンプライアンスと倫理」「コスト」「ダイバーシティ」「リーダーシップ」など、人的資本に関する11の領域において合計58の評価指標(メトリクス)を定義し、その算定方法などを規定している。正式タイトルは「Human resource management -- Guidelines for internal and external human capital reporting」。

 企業価値を評価するファクターの中で「人(人的資本)」が重視されるようになり、株主や投資家が企業に対して人的資本に関する情報開示を求めるようになった。これを受け、企業は統合報告書やHRリポートなどで人的資本の情報開示を進めている。しかし、その指標やデータの算定方法が企業ごとにばらばらでは評価が難しく、企業同士の比較もできない。これを解決するため、人的資本の評価指標やデータの算出方法を国際的に統一するためのガイドラインとして国際規格「ISO30414」が誕生した。国際標準化機構(ISO)の専門委員会「TC260」が2018年12月に初版を発行。5年後に1回目の改訂が予定されている。

 ISO30414はあくまでガイドラインであり、企業がこれに従う義務はない。しかし国際基準として導入する企業は増えており、世界的に浸透しつつある。

効果 投資家の納得性が高まる

 企業や組織が人的資本の情報を開示する際、ISO30414に準拠することで情報の信頼性と透明性が高まり、投資家や労働市場から歓迎される。企業の人的資本マネジメントに関する取り組みを比較することが可能になり、業界ごとの特徴や平均値、対象企業の位置づけも明確になる。株主や投資家が企業を評価しやすくなると同時に、企業は従業員や人材市場に対して自社の優位性をアピールしやすくなる。

 国際的に通用する情報開示が可能になる半面、日本の人事慣習には独特なものがあり、ISO30414の規定は日本企業にとって必ずしも有利に働かないといった指摘がある。

事例 ドイツ銀が第三者認証を獲得

 ISO30414の導入を支援するコンサルティングサービスが、世界的に広がりつつある。企業の取り組みやHRリポートがISO30414に準拠していることを第三者が評価し、独自に認証を与えるサービスも出てきた。ドイツ銀行はDAX30(ドイツ株価指数)企業として初めて、この第三者認証を獲得し、2021年3月にISOロゴ入りのHRリポートを発行した。

 米国証券取引委員会(SEC)は、2020年11月から全上場企業に対して人的資本の情報開示を義務づけた。これは世界的な潮流であり、国内でも金融庁と東京証券取引所が主導する「コーポレートガバナンス・コード」の2021年の改訂で、管理職における多様性の確保(女性、外国人、中途採用者の登用)と測定可能な自主目標、人材育成方針や社内環境整備の方針を実施状況と併せて公表することなど、ISO30414と関連の深い項目が大幅に追加された。

参考記事