【概要】 OKRのOは目標(Objectives)、KRは主要な結果(Key Results)の頭文字。OKRでは従来の目標管理制度のように目標の達成度で評価するのでなく、組織の一人ひとりが大きな目標を掲げ、挑戦していくプロセスを評価する。人事評価の手法というより、会社内のあらゆる組織が、同じ重要な課題に全力で取り組むようにするための経営管理手法である。

 インテルやグーグルなど、変化と成長が著しいIT企業で多く取り入れられるようになったのがOKRだ。目標(Objectives)は「何を」達成すべきかというゴールと意図を表す。主要な結果(Key Results)とは、この目標を「どのように」達成しつつあるかをモニタリングするマイルストーンとなる。最も重要な目標にリソースを集中するため「やらないこと」を明らかにして主要な結果を絞り込む。具体的には一つの目標に対して主要な結果は5個以下が望ましい。

 日本企業では目標管理制度が広く浸透している。期初に目標を設定し、期末にその目標が達成できたかどうかを申告、その達成度で上司が評価を記入し報酬を決定してきた。目標管理制度では全社で目標を設定し、部門やチームのレベルに展開したうえで、社員一人ひとりに落とし込むというカスケード型になるため、目標を「上から降ろされる」というイメージが強く、閉塞感を引き起こすことがあった。これに対してOKRは個人がストレッチした目標を掲げ、100%実現できなくても挑戦する意欲とそのプロセスを評価する点に特徴がある。

効果 組織の意思決定のスピードが速まる

 一人ひとりがボトムアップでOKRを設定することによって、自らの仕事に対するやりがいと責任感が生まれる。また、OKRというオープンな仕組みでは経営トップ以下全員の目標が共有される。そのため個人は、自分が立てた目標が会社のOKRとどう結び付くか、他部門とどう連携し補完し合うかも理解することができる。こうした協力を促すためにも部門やチームが連携してOKRを設定し共有することで、組織の意思決定のスピードを速めることができる。

 OKRで設定する目標は高い水準なので100%達成することは難しい。しかし、こうした目標を掲げることは社員が大きく成長できる絶好の機会だ。だからこそ、目標に向けて努力する社員のモチベーションを高めるため、上司・部下間や社員同士での対話やフィードバックの機会を増やし、チームワーク促進が鍵となる。従来の目標管理制度では、評価プロセスの遂行と管理が人事の役割だったが、OKRでは社員同士がコミュニケーションを深められるような人事のサポートが必要となる。

事例 花王が全社員3万人にOKRを導入

 日本企業ではメルカリがOKRを活用していることで知られるが、2021年1月、花王グループが中期経営計画「K25」の方針の一つとして「社員活力の最大化」を掲げ、約3万人の全社員にOKRを導入した。社員の一人ひとりが野心的な目標をボトムアップで設定し、目標を達成できなかったら減点するのではなく、目標に向かって努力する姿勢を加点的に評価する。

世界でもトップレベルのESG経営を推進する花王。OKR導入によって、社員一人ひとりが必ずESGに貢献する目標を設定して取り組むことにした。目標の達成度という決められた枠組みの「過去」で評価するのではなく、ストレッチした目標の設定という無限の「未来」で企業の成長を図る。OKRを全社で共有することで職務や部門を超えた社員同士の連携を深めることも狙う。

参考記事