【概要】 人事担当者の勘や経験だけに頼るのではなく、人材や経営にまつわるデータを収集・分析することで人材マネジメントに関する意思決定に役立てること。導入の目的は、人事施策の効果を高めること、あるいは人事部門の業務を効率化することだ。データを分析する際には、統計学やAI(人工知能)、テキストマイニング、BI(ビジネスインテリジェンス)などの技術・手法を活用する。

 経営環境が激変する現在、短期的に変化する事業戦略と連動した人材マネジメントが企業の命運を握っているといっても過言ではない。継続的に組織の課題を可視化して、解決に導くような人事施策を立案・実行することが求められているのだ。

 組織の課題を可視化するためには、判断材料となるデータを収集し、分析することが欠かせない。人事施策の立案を担うのは人事部門だが、これまでは経験や勘が重視されていたため、データを収集・分析するための人材や環境がそろっているという企業は極めて少ないのが現実だ。

 ただし、IT(情報技術)業界で「ビッグデータ」という言葉がバズワードとなった2010年頃から、データを収集・分析するためのITツールの利用コストが急速に下がったため、環境面での阻害要因はほぼ解消できた。そのため、社内外のデータサイエンティストの協力を仰ぐ、または人事部門内でデータアナリスト「データ人材」を育成することで、ピープルアナリティクスに取り組む企業が増えつつある。

効果 意思決定の精度を向上

 どこの企業の人事部門でも、施策を立案する際には表計算ソフトで人事データを分析しているだろう。こうした取り組みも、人材に関するデータを分析しているという点でピープルアナリティクスの一種ともいえる。近年にピープルアナリティクスとして取り上げられる事例との大きな違いは、データの質と量だ。文章や画像などの非構造化データを含めて、一度の分析で複数の大規模データを組み合わせて処理を行う点が、表計算ソフトによる分析とは一線を画するところだ。

 ピープルアナリティクスを導入して得られる最も大きな恩恵は、意思決定の精度を上げられること。経営環境が変化するとともに人材と働き方が多様化した現在、従来のように経験と勘だけに頼っていては誤った意思決定を下す恐れもあるからだ。

 さらに、従来見過ごされてきた新たな課題を見つけられることもピープルアナリティクスの恩恵の一つ。複数のデータの相関関係を分析することで、これまで気づいていなかった因果関係を見いだすことが可能だ。例えば、従業員の性格や価値観のデータとパフォーマンスの相関関係を分析すれば、部署ごとにどのような人が活躍できるのかが把握できるし、人材と仕事のミスマッチを防ぐことが可能になる。

事例 200種類以上の人事ダッシュボードが稼働中

 LINEは、直近3年の社員の増加率が平均で30%、定期的な人事発令が年に24回という高速な組織再編を支えるためにピープルアナリティクスを導入。経営のスピードに合わせて人事面での施策を実施していくためには、人材と組織を常に可視化できるような基盤が必要だと判断して、人事関連の統合データベースを構築した。

 このデータベースに、人事管理や採用、勤怠、評価、アンケートなど人事関連のシステムのデータを集約。BIツールを使ってダッシュボードを実現している。統合データベースに対して、組織別の人員構成や採用の進捗、勤怠実績など様々な切り口でデータを表示できるようになっている。合計で200種類以上のダッシュボードが稼働しているという。

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