【概要】 従業員の会社に対する愛着や思い入れ、信頼感などを表す言葉。企業と従業員の結びつきの強さを表す指標として、多くの企業が定期的なアンケートなどで従業員エンゲージメントの可視化に努めている。人的資本の評価指標にも欠かせない存在になっている。

 近年、経営環境が変化する中で企業の競争優位性を維持・向上するために、どこの企業でも従業員に対して自律的に行動することを求めている。この原動力となるのが従業員エンゲージメントだ。このため、従業員エンゲージメントを定期的に把握するとともに、その向上に取り組む企業が急増中だ。

 人的資本経営では、従業員エンゲージメントが極めて重要な役割を担う。人的資本の価値を下げる要因の一つに、従業員の離職がある。会社にとって価値の高い人材や代替の難しい人材が離職すると、会社は相当分の競争力を失う。会社に対する愛着心や信頼感を失った従業員の離職リスクは高まる。

 一方、会社への愛着心や信頼感の少ない従業員は、仕事に対するモチベーションが下がり、不良品を隠したり不正を働いたりする可能性が高まる。これも、人的資本の価値を下げるリスクとなる。

 従業員エンゲージメントの向上には、こうしたリスクを未然に防ぐという効果がある。従業員エンゲージメントは、人的資本経営に欠かせない存在となっている。

効果 人的資本経営の重要な評価指標に

 従業員エンゲージメントを定期的に測定していくことで、人的資本の状態を可視化し、客観的に評価できるようになる。例えば、従業員エンゲージメントのスコアが下がり始めれば、従業員の信頼感を損なう何らかの事態が起きている可能性が高い。逆にスコアが上がれば、人材に関わるリスクが抑えられている状態にある。

 また、人事施策の成果は従業員エンゲージメントに表れることが多いことから、人事施策の実効性を評価する指標としても使われる。人事施策が奏功している場合、エンゲージメントスコアは向上していく。逆に、特定の人事施策を行ってもエンゲージメントスコアが変わらない場合は、あまり有効に機能していない可能性がある。

 株主や投資家は、投資先企業の従業員エンゲージメントを見て人的資本経営の状態を評価することが多い。

事例 企業経営の重要なKPIに採用する流れが加速

 キリンホールディングスがグループ全体のKPI(重要業績評価指標)に規定したり、三井住友フィナンシャルグループが人事中期経営計画の柱に掲げたりするなど、従業員エンゲージメントを経営指標として重視する企業が増えている。

 人事コンサルティング会社の米ウイリス・タワーズワトソンは、従業員エンゲージメントのスコアが高い会社は低い会社に比べて営業利益率が平均で約3倍高く、欠勤日数が6.5日少なく、離職率が41%低く、総資産の伸び率が10倍高いなど、具体的な数値を示して比較優位性があることを報告している。

 また、米サステナビリティ会計基準審議会(SASB)は2018年に非財務情報の開示基準に従業員エンゲージメントを導入した。

参考記事