【概要】 ウェルビーイング(Well-being)とは世界保健機関(WHO)が提唱した概念で、人が「肉体的、精神的、社会的幸福の面で満たされた状態」と訳される。幸福感の高い人は創造性や生産性が高く、組織エンゲージメント向上にも寄与することが海外での様々なリサーチから明らかになっている。一時的な業績向上ではなく、持続的な成長を目指す企業の経営課題として、ウェルビーイングに着目する企業が増えている。

 これまで日本の産業界で推進されてきた健康経営では、社員の疾病予防やメンタル不調を防ぐ「病気でない」状態を目標としてきた。これに対して、社員のウェルビーイング向上を狙うウェルビーイング経営では、一人ひとりがさらに「活力が高い」状態で自律的に行動できる組織を目指す。

 社員のウェルビーイングを実現する条件とは何か。国連諮問機関SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が発表した2021年度「世界幸福度報告書」(World Happiness Report)では、「社員が仕事や働き方を自律的に選べる」「多種多様な人材が働ける」「組織への帰属意識が感じられる」「企業のパーパス(存在意義)が実感できる」――といった要素を挙げている。

効果 イノベーション創出の源泉に

 1年以上に及ぶコロナ禍によって、多くの企業で在宅勤務と出社を組み合わせた働き方ができるようになってきた。仕事と生活が不可分だと実感し、より良い働き方を考え直すようになった社員も多い。こうした社員の価値観の多様化と企業の人材不足を背景に、多様な人材が活躍できる組織づくりが急務となっている。

 価値観や考え方の違いを認め、尊重しあう組織が社員のウェルビーイングを高める。幸福感の高い社員は、働きがいや職場との一体感、社員一人ひとりが尊重されていることを実感している。ウェルビーイングには組織エンゲージメントを高める効果も指摘されているが、その本質的な意義はイノベーション創出にある。同質な人材で構成される組織ではイノベーションは起こりえない。いかに多様な人材をひきつけるか、その活力をいかに高めるかが鍵となる。

事例 日本企業初のCWOを設立した楽天グループ

 2019年、楽天グループは日本企業で初めてCWO(チーフ・ウェルビーイング・オフィサー)のポストを設置し、同社創業メンバーである小林正忠氏が着任した。EC(電子商取引)から金融、通信事業まで70を超える事業とサービスを展開する楽天グループは、30以上の国や地域出身の人材を有する。M&A(合併・買収)などによる急速な組織拡大を背景に、「楽天主義」という企業文化浸透とウェルビーイング実践を経営課題として掲げる。個人・組織・社会という3つの切り口でウェルビーイング施策を展開し、従業員のウェルビーイング実現がサステナブルな社会につながることを明示している。

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