【概要】 ジョブディスクリプション(JD)とは「職務記述書」を指す。組織のポジションごとに職務内容や必要なスキル、求められる成果を定義した文書のことだ。その定義に基づいて、人材を配置したり、外部から採用したりする。以前からキャリア採用時の要件定義などに活用されていたが、ジョブ型雇用を導入する企業では、すべてのポジションについて職務を定義するケースも多い。

 ジョブ型雇用が広がっている理由の一つとして、新型コロナ対策としてテレワークが普及したことが挙げられる。個々の社員の働きぶりが上長から見えにくくなるなか、従来のように仕事のプロセスを評価することが難しくなり、成果による評価を志向する企業が増えている。そこでポジションごとにJDを定め、職務内容と求められる成果を明確にしておき、その達成度で評価を進めていくことが狙いだ。

 JDをベースにジョブ型の雇用制度を運用することで、特定のジョブに長年従事させて専門性の高い社員を育成したり、ジョブごとに金額を変えた職務給を導入してメリハリをつけたりすることも可能になる。一方で、厳密に運用しようとすると、JDに記載されていない職務にはアサインできないため、本人の同意を得ない異動や転勤ができなくなるなど、企業の人事権が縮小する可能性もある。

効果 「やるべき仕事」を明確に、ただし周辺業務もこなす

 JDの定義は人事部門でなく、業務の詳細を知る各部門が主体的に行う。作成過程の議論や情報共有によって、各ポジションで担当する職務を明確にし、他者との重複や、担当者が明確ではない職務をあぶりだして整理できるなどのメリットが期待できる。

 ジョブ型を厳密に運用すると、JDに記載されていない職務はやらなくなるため、チームメンバー同士の柔軟な連携が損なわれることも懸念される。ただし、もともとジョブ型が主流だった欧米でも「1990年ごろには柔軟な運用が行われるようになっていた」と欧米の人事制度に詳しい日本人材マネジメント協会会長の中島豊氏は指摘する。“Other projects requested by the supervisors(上長との相談により決める)”といった一文を入れ、臨機応変に職務の追加ができるよう担保しておくのが一般的だという。

事例 三菱ケミカルは7つの観点で管理職に適用

 三菱ケミカルは管理職約5000人のJDを作り、定義した職務への成果で処遇している。管理職社員一人ひとりのポジションを「専門知識」「事業の知見」「リーダーシップ」など7つの観点から評価し、グレーディングする。2021年4月には一般社員約1万2000人にもジョブ型人事制度を適用したが、一般社員はJDを作成せず役割グレードから落とし込む。

 人事異動は原則として社内公募制とし、2020年10月に公募を開始した。「上司と部下が日頃から今後のキャリアプランや家庭事情をよく話し合ったうえで、本人による積極的な手挙げを促す」と中田るみ子取締役常務執行役員は話す。

 管理職の異動は本人の同意がなくても発生するが、一般社員は本人の意向を聞かずに転勤を伴う異動をすることはないという。

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