【概要】 業務の遂行に必要なスキルや技術、知識を学び直すこと。英語の「re-skill」や「re-skilling」が語源。従来から持っているスキルに新たなスキルやノウハウを加えることで、企業やビジネスが必要とする新たな価値の創出や生産性の向上、労働者としての価値向上などにつなげる。

 人的資本経営や労働者のキャリア形成において、近年、リスキルは主要テーマの一つとなっている。その背景は複数ある。

 まず「ビジネス環境の変化が加速していること」だ。一つの商品やサービスで稼げる期間が年々短縮し、新しいビジネスを開拓しなければならなくなった。そのため、新たなスキルを持つ人材が必要とされている。

 次に「働く期間が長期化していること」だ。60歳前後でリタイアするのが普通だった人生モデルが変化し、定年が伸びたり、リタイア後も仕事を続けたりする人が増えた。このため、かつての労働者は一つのスキルで一生働くことができたが、今日の労働者はキャリアの途中でスキルが陳腐化し、新たなスキルを身につける必要性が高まっている。

 さらに、「ビジネスのデジタル化が加速していること」もある。あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれ、一見デジタルとは無関係に思える農業や漁業といった一次産業までもがITを活用するようになった。このため、あらゆる産業を支える人材にITリテラシーの追加が求められている。

効果 リスキルは重要な経営戦略、人材価値の向上にも貢献

 リスキルの効果は、企業と個人の両面から見ていく必要がある。企業側から見ると、一つの事業のライフが短くなり、常に新しい事業を模索しなければならない時代に入っている。新しい事業を興すには、新たなスキルやノウハウを持った人材が必要になる。これを労働市場から調達しようとしても、労働人口の減少や慢性的な人材不足の影響で難しい。そこで、既存の従業員のリスキルによって、必要な人材を確保することが重要な経営戦略になっている。

 個人の面から見ると、労働市場における自身の価値を高めることができる。終身雇用制度が崩壊し、複数の企業を渡り歩く人が増えている。そんな中、リスキルによって能力の幅を広げることは、労働市場で自分をより高く売るための材料になる。特に、DX人材はあらゆる業界が必要としており、既存の業務スキルに加えてITやデジタル活用の素養を身につけることが推奨されている。

事例 欲しい人材をリスキルで確保する企業が続々

 2019年に「人的資本経営の実現に向けた検討会」(経済産業省)が発表した「人材版伊藤レポート」で、リスキルの重要性が指摘されている。同レポートが提唱した「人材戦略に求められる5つの要素」の要素(3)が「リスキル・学び直し」だ。

 「未来人材会議」(経産省)が出した「未来人材ビジョン」では、人材の採用方法や雇用形態の変化を詳しく報告し、リスキルの重要性から学校教育の在り方にまで言及している。

 リスキルを成長戦略の柱にしている企業は多い。例えばAGCは、開発、生産、販売、物流など、既存の業務知識を持つ人にDXに必要なデータ解析スキルを習得させている。実業とデータ活用の2つのスキルを身につけた人材を、同社は「二刀流人財」と呼んで育成を急ぐ。

 また、サイバーエージェントは創業時の広告代理店業からメディアやゲーム、テレビ事業へとポートフォリオを拡大する中で、数年ごとに領域を特定して「目的のあるリスキリング」を組織的に進めている。

 米IBMは事業環境や事業ポートフォリオの変化に対応するため、従業員のリスキルとアップスキルを強化している。リスキルを通じた人員配置の目標を75%に設定するなど、リスキルを活用した人的資本の向上に努めている。

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