【概要】 ジョブコーチ(職場適応援助者)は、厚生労働省が定めた障害者の職場適応支援を担う専門職。2002年の障害者雇用促進法改正により制度化された。障害者の雇用管理などの業務担当者を対象にしており、障害を持つ本人、同僚や上司、事業主、本人の家族に対する支援を行う。「配置型」「訪問型」「企業在籍型」の3パターンがあり、配置型と訪問型は地域障害者職業センターや福祉施設から障害者の就労先を訪問し、企業在籍型は障害者の就労先企業が雇用する形をとる。中でも、自社の事業・業務内容に対する理解をベースに支援できるメリットから企業在籍型ジョブコーチへの関心が高まっている。

 2016年の障害者雇用促進法改正で身体障害者や知的障害者に加え、精神・発達障害者が雇用義務の対象となり、障害者雇用率(法定雇用率)の対象となった。特に、精神・発達障害はその障害特性が分かりにくいとされるが、厚生労働省所定の養成研修修了で認定されるジョブコーチは、こうした障害特性を踏まえた業務内容の設定、職場環境の調整を行う専門知識を身に着けることができる。

 企業在籍型の養成研修受講者は増加しており、2019年に独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が行った調査[注1]によると、障害者が働く部署や人事総務部門の責任者・担当者が企業在籍型ジョブコーチとして活動する例が増えているという。実施している支援内容で最も多かったのは、人間関係や職場内コミュニケーションに関する支援で、障害者本人のメンタル面でのサポートが重視されている。また、障害者と共に働く人々に対する支援では、障害特性を踏まえたナチュラルサポート[注2]が進むよう本人と周りの人々との「橋渡し役」を担っている。

[注1]全国の企業在籍型ジョブコーチ570人、その所属企業248社が回答。「企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)による支援の効果及び支援事例に関する調査研究」(リンクはこちら)
[注2]障害者が働く職場の上司や同僚などが、障害者が働き続けるために必要なさまざまな援助を、自然に、または計画的に提供すること

効果 「企業在籍型」は長期で安定した支援ができる

 この調査では、企業在籍型ジョブコーチを配置した効果が高かった項目として「障害者を雇い入れた際に、職場適応がスムーズになった」、「外部の障害者支援期間等との連携が円滑になった」ことが挙げられている。

 1回当たり数時間、数カ月間のサポートで終了する配置型や訪問型と違い、企業在籍型は障害者本人と共に働いたり、直接接したりする機会が多く困りごとがあってもそれを早期に把握し、長期間安定した支援ができる。その結果、企業在籍型は障害者本人の入社、配置、育成とそのキャリア形成にトータルに伴走できる。さらに、職場だけで対応が難しいケースでも医療機関や地域障害者職業センターなどの支援機関と連携しながら解決に取り組むことができる。

 ジョブコーチは障害者本人と事業主双方の承諾があって利用できる制度だ。障害者雇用の枠で働く障害者の支援を想定しているため、現時点では特例子会社など障害者雇用に携わる事業所に配置されることが多く、一般雇用の枠で働く、精神・発達障害を持つ/持つと思われる人に対応することは難しい。障害特性が明確でなく、本人がジョブコーチの支援を受けることに否定的なこともあるからだ。NPO法人ジョブコーチ・ネットワーク理事長の小川浩大妻女子大学教授は、「こうした場合には、ジョブコーチの専門性を身に着けた人事・総務部門の人材が、その本人の職場で働く上司や助言を行う方法もある」と話す。

事例 発達障害者支援にジョブコーチ資格を取得

 電通国際情報サービス(ISID)では障害者雇用拠点の一つとして、2020年に品川事務センターを新設した。ここで働く10人の発達障害社員のサポートを、企業在籍型ジョブコーチの資格を取得したスタッフが担当する。スタッフがジョブコーチの専門知識を得たことで、一人ひとり異なる特性を踏まえて、障害のある人の得意なことや状態の見極めがよりスムーズになったという。

参考記事