近年、欧米企業を中心にDE&Iを取り入れようとする組織が増えつつある。その1社であるジョンソン・エンド・ジョンソングループは、2021年から社員に対しDE&Iを標ぼうしているが、その際に自転車の例を示している。自転車レースを開催するに当たって、体格や体力、障害の有無などの特性が異なるメンバー全員が同じ自転車に乗るのではなく、メンバーごとにサイズや機能の異なる自転車を提供してこそ「公正」なレースが行えるという考え方だ。
効果 IT業界は女性の離職防止に活用
デロイト トーマツ コンサルティングの調査レポート「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの醸成 テクノロジー領域での女性人材の採用・リテンションを実現するために」では、テクノロジー領域で働く女性の離職率が男性より高いことに着目し、女性の定着・活躍のためのDE&Iの有効性を調査している。仕事から1年以上離れていた人材を生かすために、キャリア復帰プログラムやリターンシッププログラムを提供する企業が増加していると報告。12~16週間、勤務者と同等の給与を支払いながらトレーニングとメンターシップ、実務経験が得られる機会を提供しているとする。
一般の社員よりも優遇しているように見えるこうした対応は、高い専門性を持ちつつも一時的に仕事の体力が落ちている人材を回復させ、仕事に復帰して戦力となることを支援するもの。人材獲得競争の激しいIT業界などでは特に有効な施策だが、専門性を持つ人材の確保と、多様な経験の活用を実現するうえで、様々な組織で検討に値するといえるだろう。
事例 管理職の評価に盛り込む
ジョンソン・エンド・ジョンソングループは人材選考プロセスや社内の人材登用の際は、性差の偏りがないよう配慮しながら候補を検討するという取り組みを推進している。2021年からはグループ全体で経営層や管理職に対し、エクイティーに関連するアクションを年度評価の目標の中に組み込んでいる。