リモートワークの浸透によって、オフィスとそれ以外の場所で働く「ハイブリッドワーク」が主流になりつつある。こうした環境で重要なことは、従業員の安心・安全を担保しながら、いかに生産性を高めるかだ。今やファシリティーマネジメントは、経営戦略や人事戦略と切り離せない。「CHO Summit 2021 Spring」(2021年4月27~28日にオンライン開催)において、新しいオフィス環境や新しい働き方を提案しているイトーキの二之湯弘章氏に話を聞いた。聞き手は、日経BP総合研究所 上席研究員 Human Capital Committee事務局の大塚葉が務めた。(取材・文=吉川 和宏、撮影=川田 雅宏)

イトーキ 営業本部FMデザイン統括部 統括部長 二之湯 弘章 氏

「ハイブリッドワーク」が働き方の主流になる

――新型コロナウイルスの感染拡大で、リモートワークが浸透している。今後はオフィス環境も変わっていくのか。

二之湯弘章氏(以下、二之湯):これからは「オフィスとそれ以外の場所で働く『ハイブリッド型』が主流になっていく。コロナ禍で多くの方がリモートワークの良さを理解し、継続したいと考えている。一方でオフィスに行かないからこそ、オフィスの価値も分かってきた。企業側から見ると、ハイブリッドワークには働き方改革の推進とコスト削減というメリットがある。従業員には、ワーク・ライフ・バランスの実現と時間効率の向上とメリットがある。企業と従業員の双方が恩恵を受ければ、エンゲージメント向上による生産性の拡大が期待できる。

――重要なのは、働く場所を選ぶことによって仕事の生産性が上がるかということだ。

二之湯:イトーキが従業員を対象に実施したアンケートによると、緊急事態宣言下でオフィスと自宅それぞれで「生産性が高い仕事ができているか」を尋ねた設問で、オフィスが70.7%だったのに対して、自宅は54.6%にとどまった。この一方で、在宅で働くことに対する満足度は高い。これは、ハイブリッドの働き方では従業員がオフィスとそれ以外の場所を合理的に選択しなければならないことを意味する。従業員には高い自律性と責任感が求められることになる。

――業務ごとに働く場所を従業員が自律的に選べるようになれば、生産性を向上できるということか。

二之湯:その通りだ。これを実現するには、ある業務を一つひとつの「活動」に分解して考えることが有効だ。例えば、デザイナーでもある私には「平面図作成」という業務がある。在宅勤務に向いた業務だと思っていたが、実際に自宅で仕事を進めると、仲間とのブレストが必要な「アイデア出し」や、先輩や専門家への相談が必要な「法規確認」などオフィスで働いた方が生産性を高められる活動が、この業務には含まれていた。

 生産性を極大化するには、業務を構成するそれぞれの活動において生産性を極大化することを考えるようにするとよい。個々の従業員が自分の業務と向かい合い、生産性をキーに自律的に働き方をデザインした上で、それぞれの活動を最大限に実践する――。こうした行動を、イトーキでは職能を成長させる取り組みだと位置づけている。

働く場所を主体的に選択できる「ABW」を新本社に導入

――2018年に設立した新本社「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)」は、それらの考え方を取り入れたオフィスなのか。

二之湯:新本社には、従業員が仕事の状況や内容に応じて働く場所を主体的に選択できる「Activity Based Working(ABW)」というワークスタイルを導入している。ABWの考え方に基づいて、従業員の活動を「高集中」「コワーク」「電話/Web会議」「二人作業」「対話」「アイデア出し」「情報整理」「知識共有」「リチャージ」「専門作業」に分類して、それぞれに合わせた働く場所を用意している。

 このオフィスには画一的な会議室は設けていない。 一般に会議室は、意思決定の場であったり、部下の相談を聞く場であったり、アイデア出しの場であったりと多様な使われ方をしている。しかし、それぞれの用途で最適なしつらえ方は異なってくるはずだ。そこで新本社では、それぞれの活動に合わせたスペースを用意することにした。

――ハイブリッドワークが主流となる今後のオフィスづくりは、どのように変わるのか。

二之湯:これまでは毎日、従業員が出勤するという前提でオフィスの面積を導き出していた。しかし、これからは(1)毎日オフィスに出社して仕事をする「オフィスワーカー」、(2)自宅とオフィスの両方で仕事をする「ミクスドワーカー 」、(3)ほとんどの業務を外出先で処理する「フィールドワーカー」、(4)一切オフィスに出社しなくても支障がない「WFH(在宅)ワーカー」――の4つに分類した上で、それぞれが「デスクワーク」「会議」「打ち合わせ」「休憩」「在宅勤務」に費やす時間を分析して、「デスクスペース」「会議スペース」「打ち合わせスペース」「休憩スペース」の面積を決めるべきだ。

 こうした面積配分は、その企業が「ありたい姿」を表すものでもある。新たにオフィスのデザインを考えることは、企業の目指すべき姿をデザインすることにほかならないのだ。