自律的な学びの場を提供することで社員のエンゲージメントを高めることに取り組む企業が増えてきている。コーナーストーンオンデマンドジャパンの石崎健一郎氏が「CHO Summit 2021 Spring」(4月27~28日にオンライン開催)に登壇し、LMS(ラーニング・マネジメント・システム)を活用して、「人財育成におけるDX」と「ビジネスにおけるDX」という2つのデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための秘訣を解説した。 (取材・文=岩辺 みどり、撮影=川田 雅宏)
コーナーストーン オンデマンド ジャパン 執行役員 ストラテジー&マーケティング シニアディレクター 石崎 健一郎 氏

スキル開発・キャリア形成を人事から社員主導に移行

 DXに取り組む企業は多いが、8~9割は成功していない――。セッションの冒頭で石崎健一郎氏が紹介したニュース記事だ。この記事によると、DXが成功するのに必要な要因は「全従業員へのデジタル教育」「デジタル知見を有した経営陣による意思決定」「デジタルとビジネス業務知見を有した推進組織の設置」の3つが整っていることだという。

 米コーナーストーンオンデマンドは、世界中の企業にLMSをSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供している企業。日本法人で執行役員を務める石崎氏は、冒頭の記事に対して「人にまつわるスキルと学びが課題となっていることが分かる」と評した上で「コロナ禍の影響で10年分に相当するDXの普及・浸透が1年の間に起こったといわれている現在、どこの企業にとっても人にまつわるスキルと学び、すなわち組織文化の変革やデータ活用の意識付けなど変革を推進するためのラーニングが重要な課題として急浮上してきた」と指摘する。

 石崎氏によると、日本でもLMSを導入する企業が増えているが、その目的は変化しつつあるという。これまでは「長期雇用を保証し、独自基準で企業内人材を育成していく」という企業目線の目的を掲げるケースが多かったが、現在は「従業員の成長を第一に、社内外での学習や経験を通じた成長機会を提供し、専門性を高め、個人のキャリアと成長を促していく」という従業員目線の目的に変わってきた。石崎氏は「従業員も、企業に『就社』するという意識から、自分の専門を高めてキャリアに結び付けていくという『就職』への意識の転換が必要になっている」と語る。

 このような変化に対応するために、コーナーストーンが提供するLMSも企業目線から従業員目線での学習体験を実現するシステムへと進化してきた。これまでに180以上の国・地域で6000社以上の企業が導入し、7500万人以上のユーザーが利用しているという。国内でも大手企業を中心に多数の導入事例があり、毎年10社以上が新規に導入している。

「人財育成におけるDX」と「ビジネスにおけるDX」を支援

 現在、コーナーストーンでは自社のソリューションを通して顧客企業に対して2つのDXを支援している。「人財育成におけるDX」と「ビジネスにおけるDX」の2つだ。前者の具体的な取り組みとして、石崎氏は小野薬品工業の事例を紹介した。

 製薬会社である同社は、MR(医薬情報担当者)の自発的・継続的な学びの場となるシステムの導入を検討していたという。このシステムの要件として(1)スキマ時間を活用できる「モバイル学習」や「マイクロラーニング」、(2)MR同士で切磋琢磨(せっさたくま)できる「ゲーミフィケーション」や「ソーシャルラーニング」、(3)効率的にスキルを強化するための「客観的な理解度判定」や「AI(人工知能)による個別学習提案」――という3つを掲げていた。これらを実現可能なソリューションとして、コーナーストーンを選定。学習コンテンツを細分化するマイクロラーニングや、確認テストでの理解度の測定、研修プログラムのレベルごとの設定、学習結果の可視化といった仕組みを導入することで「人財育成のDX」を実現した。

 「ビジネスにおけるDX」では、日立製作所グループ内の教育を一手に引き受けている日立アカデミーの事例を紹介。同社はコーナーストーンのソリューションを使って、「ビジネスにおけるDX」を推進する人材として(1)データサイエンティスト、(2)セキュリティースペシャリスト、(3)エンジニア、(4)デザインシンカー(デザイン思考を主導する人材)、(5)ドメインエキスパート(内容領域専門家)――という5種類のプロフェッショナルの育成に取り組んでいる。(1)~(3)がデジタル分野、(4)と(5)が変革の分野のプロフェッショナルという位置づけだ。この2つの分野の人材をバランスよく育成することによって、DXを加速できるからだ。

 さらに、コロナ禍の中、DXリテラシー教育を国内グループ社員の16万人全員に2020年度単年度で実施完了しているが、ここでもコーナーストーンLMSプラットフォームのメリットが生かされ、LMSの管理機能と体験値向上機能が活用されていたと紹介した。このことにより、全社員のDXリテラシーの底上げと、専門人材をバランスよく育成配置でき、日立グループのDXを強力に推進する人材基盤ができてきていると指摘した。

 コーナーストーンでは、日本のユーザーに合わせてソリューションのローカリゼーションや品質向上に取り組んでいるという。石崎氏は「最先端の人材育成ソリューションで、日本のお客様のビジネス課題解決を支援していきたい」と抱負を語る。