
新たな価値を創出するための4つの秘訣とは?
コロナ禍の影響によるリモートワークの導入・促進によって、大半の企業において働く場所の多様化や働き方の変化が急速に進んでいる。PwCコンサルティングの北崎茂氏は、これらの影響によって「マネジメントが意思決定のよりどころにしていた情報や場などの多くのアセットが失われつつある」と指摘する。
大半の企業が現在、コロナ禍の影響によるマイナスを取り戻す施策を推進中だが、北崎氏は「マイナスをゼロに戻すだけでなく、コロナ禍前よりもプラスに作用するような取り組みが求められる」と指摘する。というのも、感染拡大が落ち着いても新型コロナウイルスと共存せざるを得ないからだ。同社の調査でも、日本企業のCFO(最高財務責任者)の88%が「リモートワークを恒久的な働き方として導入する」と回答しているという。
北崎氏は「ニューノーマル時代には『バーチャルエクスペリエンス』と『リアルエクスペリエンス』の共栄が価値創出の鍵となる」と指摘した上で、これを実現するための4つの秘訣を解説した。1つ目が「マネジメントスタイルの改革」だ。意思決定の精度を上げるために組織の情報に対する透明性を担保するとともに、従業員のパフォーマンスを上げるためのエンパワーメントを実践することだ。
2つ目が「スキル・マインドセットの見直し」である。ビジネスのデジタル化が急速に進むことに対応するために健全な危機意識を醸成することに加えて、従業員にはデジタルリテラシーの向上やアジャイルな仕事の進め方への適用が求められる。
3つ目は「新たなコラボレーションスタイル」。リモートワークでは、コラボレーションに地理的な制限がなくなり、バーチャルな世界でのアイデア創出が可能になる。これを促進するためには、従業員に対してノウフーやノウハウの仕組みを提供することが重要な課題となる。
4つ目が「働き方のインフラの見直し」だ。オフィスの役割を見直すとともに、仮想的なオフィスの中で円滑にコミュニケーションができるような仕組みが必要になる。PwCコンサルティングでは、オフィスを「コラボレーションの場」と位置付けているという。

社員と組織の生産性やモチベーションを可視化する
北崎氏の解説の後、これらを具現化するために同社が導入しているツールを鈴木貞一郎氏が説明した。同社は(1)社員と組織の生産性やモチベーション、ネットワーキング状況の可視化する「Workstyle Analysis」、(2)コラボレーションツールの活用(頻度・使用内容)を可視化する「Score Card」、(3)仮想オフィスでの働きぶりを可視化する「Vertical Workplace」、(4)従業員のスキルや経験を可視化する「Collaboration Platform」――という4つの可視化ツールの導入を推進しているという。
Workstyle Analysisは、パルスサーベイをはじめとしたアンケート調査や、カレンダーや電子メール、チャットなどのオフィスツールの活用状況、人事システムに蓄積されたデータなどを分析することによって、従業員の生産性やモチベーションの状況の推移を全社レベルおよび組織や役職・年代別にグラフィカルに可視化するツールだ。このほか、組織や個人の間でのネットワーキングを可視化する機能も備えている。
このツールを同社で活用した結果、「コロナ禍の前にはサービスをハブとして組織間コミュニケーションがつながっていたが、リモートワークが進むのに伴って孤立するチームがあることが浮き彫りになった。コミュニケーション量が一定値を下回るチームでは、職位間のコミュニケーションハブが希薄でスタッフ層が孤立している状況も明らかになった」(鈴木氏)。個人別のネットワーク分析では、孤立しているスタッフの傾向を把握できたという。これらの分析結果に基づいて、小集団化によるスモールコミュニケーションを増やしたり、チーム間の連携を強化するイニシアチブを立ち上げたりするなどの施策を打っている。
最後に北崎氏が、ビジネスリーダーが持つべき心構えと取るべきアクションとして(1)思い立ったが吉日、(2)「リスクを伴う」判断と「悔いなき」アクションが大切、(3)はじめの大きな一歩、(4)テクノロジーの議論は避けられない、(5)「業務」よりも「ヒト」を見る、(6)組織の未来を語ること――という6つを提言して、本セッションを締めくくった。