専門スキルを生かし兼業や副業をしてみたい、育児や介護と両立できる柔軟な働き方をしたいといった働き手のニーズはますます多様化している。総合商社の双日は、こうしたニーズに応えるジョブ型雇用の新会社を立ち上げた。新会社では社員の独立・起業も視野に入れたキャリア支援も行う。なぜ、別会社でジョブ型雇用をスタートするのか。同社人事部人事企画課課長補佐の村山宏氏、人事部人事企画課の齊木一哲氏に聞いた。

双日人事部人事企画課課長補佐の村山宏氏(写真左)、同人事部人事企画課の齊木一哲氏(写真右)

 2004年にニチメンと日商岩井が合併して誕生した総合商社の双日は、2021年3月、ジョブ型雇用を採用した「双日プロフェッショナルシェア」(以下、新会社)を設立した。5月から社員向け説明会を実施、2021年7月の業務開始に向けた準備を進める。

 双日では全社へのジョブ型雇用導入を目指し、昨年4月から人事が中心となって検討を重ねてきた。ただし双日単体でも社員は約2550人に及び、全員にジョブ型を適用するには時間がかかる。そこでジョブ型の必要性が高い人材に優先して適用するため、新会社を立ち上げた。

 双日人事部人事企画課課長補佐の村山宏氏は、「新会社への転籍者は副業や兼業などキャリアの幅出しをしたい社員、介護などの制約がある社員を想定している。入社後10年くらいを経て双日の中で教育を受け、さまざまな仕事を経験して商社パーソンとして成長してきた社員に、その先のキャリアを自律的に考えてほしい」 と話す。初年度は20人程度を受け入れる方針で、新会社へ転籍希望を出せるのは35歳以上の社員とする。

週2日勤務も可

 新会社では週2~3日勤務という働き方を認める。ただ、働き方が変わるからといってこれまでの職務を強制的に変更することはない。「職務が同じ人もいるし、変わる人もいる。双日には様々な本部(事業区分)があるが、本人の経験や専門性と、会社・部署のニーズとをマッチングしていく」(村山氏)。

 欧米のジョブ型雇用はポストを決めてそれぞれのジョブディスクリプションを定義し、人材を当てはめる。これに対して今回新会社が採用するのは、社員が「どう働きたいか」に基づいて、個別に職務(ジョブ)や働き方を決めていくという仕組みだ。人事部人事企画課の齊木一哲氏は「日系企業ならではのジョブ型雇用の仕組みを模索していく」と話す。

 スタート時は職務給を導入せず、転籍前の役割等級と業務内容を考慮し、報酬を決定。週3日勤務であれば、その報酬の3/5を支払うといった対応とする。その後1年かけて、本人の貢献評価をレビューし、来年度はそれに見合った報酬を提示することを目指す。村山氏は「新会社における評価と報酬をどう設計していくかは難しい課題」と話す。「商社の仕事は抽象的なものも多い。それも踏まえてジョブをどう定義し、報酬に反映していくかを双日グループ外からも知見を集めている。こうしたノウハウを蓄積していくことも新会社を設立した意義の一つ」(村山氏)。

「本人発信」のキャリア形成を手厚くサポート

 新会社に転籍した社員には副業・兼業も認める。「自らのスキルを社外でも活用したいという本人発信のキャリア形成を可能にする」と村山氏は話す。

 双日の社業に関連した副業・兼業もできる。双日は2019年に全社新規事業創出プロジェクト「Hassojitz(ハッソウジツ、「発想×双日」を意味する)」をスタートさせ、社員が提案した有望な事業アイデアの事業化を目指している。すでにパートナー企業との資本業務提携までこぎつけたプロジェクトもあるが、こうした事業に副業や兼業の形で関わることができる。担当業務以外に、本人発信でやりたい仕事に就ける機会を拡大するわけだ。さらに新会社設立に合わせて独立・起業支援制度も整備し、社員の独立・起業への道筋もつけた。

 こうした動きは優秀人材の流出につながらないのか。「良い人材を社会に輩出していくのが企業の使命。起業家精神がある人を輩出しつつ、双日グループにも価値を生み出す仕組みにしたい」(齊木氏)。そこで新会社と独立・起業支援制度に加えて新設した第3の制度が「双日アルムナイ(卒業生)」だ。