年功序列で処遇が上がっていく日本型雇用では、組織の新陳代謝を進めるために一定の年齢で役職を外す役職定年を運用する企業も多い。しかし、本人のスキルや適性に関係なく役職を外され待遇が低くなることが、ミドル・シニア社員の働きがいや生産性向上を阻害する要因になっている。(写真撮影:川田雅宏)

 ポストオフ前と比較して「賃金が減った」人は82.8%、「やる気が下がったまま」になっている人は約4割――。リクルートマネジメントソリューションズ(以下リクルートMS)が2021年6月に発表した「ポストオフ経験に関する意識調査」の結果では、一律の年齢や期間で組織長などの役職を外れる経験(ポストオフ)をした50~64歳の会社員の待遇ややりがいが低下する実態を浮き彫りにした。一方でポストオフ当事者の仕事に対する適応感を高める環境要因として「年齢によらない能力開発投資」「インクルーシブ(包摂的)な風土」「上司からの尊重と高い期待」を挙げた。

 調査を行ったリクルートMSでは独自の人事制度と研修を運用しており、それがポストオフを経験したミドル・シニア社員の働きがいと生産性向上に寄与しているという。その実態を人事部門とポストオフ当事者に聞いた。

管理職もプレーヤーも再雇用者も同じ等級なら同じ処遇

 リクルートMSはリクルートグループの人事コンサルティング会社として2004年に設立、2013年には「プロフェッショナルとしての成長を実現」を軸に人事制度を策定した。この制度では役職定年を設けず、定年まで管理職を務めることができる一方でいったん管理職に就いた人が、適性や実績によってポストオフすることも少なくない。ただし同じ等級であれば、管理職もプレーヤーも給与は同じ。さらに60歳での定年後に継続雇用された場合も、正社員と同じ基準で等級が決定され、同等のミッションであれば処遇は変わらない。

 この策定を手掛けたコーポレート統括部経営企画部人事グループの立花則子氏は「プロフェッショナルとしての専門性の高さや影響力の大きさで等級・処遇を決めている。年次による昇給やベースアップは一切ない。管理職もプレーヤーも同じ等級なら同じ報酬だ」と話す。

立花 則子 氏
立花 則子 氏
リクルートマネジメントソリューションズ コーポレート統括部 経営企画部 人事グループ

 評価や人材開発も、定年後の継続雇用者を含むすべての社員に同じ制度が適用される。半期ごとに目標管理制度(MBO)による本人と上司による面談を通して評価を実施、賞与を決定する。日常的には1on1など通じて、仕事における「WILL」(したいこと)、「CAN」(できること)、「MUST」(すべきこと)を上司と部下で共有する。MBOで設定する目標には『クライアントへの提案で○○力を伸ばす」といった専門性を高める観点での目標を20%入れることができる。

 また、社員の成長支援として、福利厚生や書籍購入などに年間50万円を使えるカフェテリアプラン制度に加え、資格取得や外部研修受講、学会費などに使えるポイント制度(入社時10万円相当)を運用しており、ポストオフ社員や継続雇用者も対象だ。社員が講師や生徒となって相互に学び合う公募制の「RMSアカデミー」も開講している。「こうした制度や研修を通じて、社員は自ら専門性と実力を磨き続けることを常に意識している」(立花氏)。

 とはいえ、「40歳を過ぎると新しいことを学んでいくのは大変で、『この会社にいてよいのか』と疑問持つ人も出てくる」と立花氏は言う。そこで30歳と40歳のそれぞれ直前でカウンセリングを実施し、キャリアについて考える機会を多く持つ。立花氏は「会社としては、今まで頑張ったからその延長としてこれからもいてほしいというのではなく、これからも今まで同様に事業に貢献し続けて欲しい」と話す。