日本経済新聞社と日経BP総合研究所は、2021年4月27日・28日の両日に「CHO Summit 2021 Spring 変わる組織、変わるリーダー~ニューノーマルの人材戦略~」(協力・Human Capital Online)をオンラインで開催。人材マネジメントの先進企業のトップや最高人事責任者(CHO/CHRO)、有識者が次世代の人材戦略や具体的な取り組みを披露した。その中から、日本経済新聞社でデジタル化や人事の潮流に詳しい2人が登壇した対談「正解のない時代の人材育成とは~デジタル大変革の時代に求められる、世界標準のリーダーのスキルと資質」を振り返る。(取材・文=浅井 美江、撮影=川田 雅宏)

DX時代に急がれる大企業モデルからの脱却

 本セッションの前半では、日本経済新聞社で客員編集委員を務める関口和一氏が「コロナ禍と5Gが促すデジタルトランスフォーメーション(DX)最前線」について解説した。2021年1月にオンラインで開催された世界最大級の家電・技術見本市「CES 2021」で目立った「5G」「DX」「自動車関連」など6つのキートレンドを挙げた上で、5Gがもたらすビジネス環境の変革や、「CASE(接続性・自動運転・共有・電動化)」に代表されるモビリティー革命の潮流を紹介した。

日本経済新聞社 客員編集委員 関口 和一 氏
日本経済新聞社 客員編集委員 関口 和一 氏

 その後に「2年分のDXが2カ月で実現した」という米マイクロソフトのCEO(最高経営責任者)のコメントを引き合いに出し、コロナ禍で世界的にDXが加速した状況を説明。しかし、日本では濃厚接触者特定アプリの不具合などデジタル戦略の不備が続出している。米国を筆頭に世界中でデジタル技術が促すパラダイムシフトが起きる中で「日本のデジタル変革は実に7年遅れ」と語気を強めた。

 関口氏は「インターネットの普及に伴うビジネス変化への対応の遅れや、従来の構造を引きずった誤ったデジタル化などが生産性を低下させている」と指摘。さらに、日本の情報化投資が1995年から増額されていない上、投資の8割が既存システムのメンテナンスに消えている現状を説明した。

 スイスのビジネススクールIMDによる国際競争力順位で、日本は世界トップだった1990年代中頃から年々下降を続け、今や34位。かつて同スクールを取材した関口氏が、日本のランクが低迷する理由を尋ねたところ「1990年代までの日本は、大企業モデルでは世界で最も成功を収めたが、中小企業やベンチャー企業で経済を盛り立てる仕組みの構成には失敗した」と指摘されたという。

 こうした状況を打破するためには、組織づくりにおいて大企業モデルからの脱却を急ぐことが重要だとして、「大切なのはデータに基づく意思決定。もはや精神論では組織は動かない。人材教育についても同様だ」と強調した。ナレッジや新しい情報資産を生み出すためにはデータサイエンティストの育成が急務とし、「暗黙知からAI・ビッグデータへの移行」や「労務管理からナレッジ管理へのシフト」などが必要だと訴えた。

 続けて、5G時代におけるスマートワークや組織づくりを提案した関口氏は、講演の最後に、英国の経済学者クリストファー・フリーマン氏の「イノベーションは景気低迷期に加速し、景気が回復した時に開花して、強力な新しい技術革新の波を巻き起こす」という言葉を引用。「コロナ禍に生まれた技術が将来に花を開いて、経済の新しいうねりを起こしていくためには、日本の企業もその流れに後れを取らないようにしたい」と結んだ。

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