社内コミュニケーションをテーマにしたサイバーエージェント常務執行役員 CHOの曽山哲人氏とメルカリのDiversity & Inclusion Teamマネージャー寶納弘奈氏の対談第2弾。リモート環境でのコミュニケーションには難しさもあるが、リモートだからこそのエンゲージメント向上策もある。その仕掛けとは。(モデレーターは日経BP総合研究所客員研究員の須東朋広、構成はHuman Capital Online発行人 小林暢子、写真は川田 雅宏)。

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須東朋広(以下、須東):お二人のお話を受けて、パネルディスカッションに移ります。コロナ禍の中で顔を合わせる機会が減り、要件だけを伝えるようなコミュニケーションが主流になってきたけれども、皆さんまだまだ慣れないという話をよく伺います。お二人は今の環境での社内コミュニケーションの課題点をどう克服しているのでしょうか。

曽山哲人氏(以下、曽山):オンラインのコミュニケーションが主流になったことで、ポジティブな側面がいくつかありました。

 一つはオンラインでも会議は成り立つし、議論もできるし、移動時間もなくなって非常に生産性が上がることが分かったこと。サイバーエージェントはそれまで週5日会社に出社する会社だったんですが、リモートと出社のハイブリッド型の働き方を取り入れています。特に大人数の会議は移動コストも非常に高いです。みんなで集まるときには、その良さを徹底的に生かそうということになりました。

 特にママ社員はリモート勤務について非常にポジティブです。8月に全社員に「GEPPO」というパルスサーベイで「リモート勤務についてポジティブかネガティブか」のスコアを取ったところ、ポジティブな人は7割ぐらいいて、コメントも数百件入ってきたのです。分析するともっともポジティブな反応があったのがママ社員たちで、「移動しなくていい」「子供のそばにいられる」「何かあればすぐ対応できる」「いい意味で自由度が上がった」といった非常に前向きな意見が多く、生産性が上がったという声も大きかった。

 もう一つ、健康に意識を向ける社員がすごく増えました。通勤の時間を運動に充てている社員も多いですね。そういう面では、すごいポジティブな効果があります。

 一方で困っている人も一部にはいます。マネジメントやリーダー層の中には「コミュニケーションの苦労がある」というコメントを挙げる人も。自分もそうですが、ちょっと声をかけて周りの状況を見てあげたりとか、表情を見てあげたいとかですね。そこで、共通の出社日を設けることで、対応できる機会を作っています。

 職種別、例えばエンジニアと営業で差があるかというと、実は両方ともポジティブです。エンジニアはもともとリモートに向いているイメージがありましたが、営業も「お客様がリモートになっているので、オンラインで営業活動をすることに抵抗はない」という声が多いです。

サイバーエージェント常務執行役員 CHOの曽山哲人氏
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サイバーエージェント常務執行役員 CHOの曽山哲人氏
上智大学文学部英文学科卒。 1998年に株式会社伊勢丹に入社し、紳士服の販売とECサイト立ち上げに従事。 1999年に当時社員数20名程度だった株式会社サイバーエージェントに入社。 インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。 現在は常務執行役員CHOとして人事全般を統括。 キャリアアップ系YouTuber「ソヤマン」としてSNSで情報発信しているほか、 「若手育成の教科書」「クリエイティブ人事」「強みを活かす」などの著作がある。

寶納弘奈氏(以下、寶納):先ほど曽山さんのプレゼンテーションで「信頼残高」という言葉が出てきて、とても的を射た言葉だなと思いました。信頼残高の問題はメルカリにもあります。コロナが始まってリモート基調になってから入社してきたメンバーは、「上司にもチームメンバーにも会ったことない」、「自分の隣のチームがどこなのかも分からない」という状況で入ってくるので、信頼を積み上げるきっかけが全くないんですよね。信頼残高がずっとゼロのままのメンバーを心配する声は社内でもちらほら聞きました。

 長くメルカリにいるメンバーも「今まではオフィスに行くだけでちょっとずつ信頼残高が貯まっていたのに、オフィスに行かなくなると増えようがない。新しいネットワークもできないし、ちょっとコーヒー飲みながら新しいアイデアについて話そうみたいな機会もない。普段の仕事はうまくいくけれども、何かクリエイティブなことしようってなったときに、飛躍的なアイデアは出てこないかも」という話をしています。この信頼残高をオンラインコミュニケーションでどう作っていくかは、どの会社も課題と感じてらっしゃるんじゃないでしょうか。

メルカリのDiversity & Inclusion Teamマネージャー寶納弘奈氏
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メルカリのDiversity & Inclusion Teamマネージャー寶納弘奈氏
異文化コミュニケーショントレーナーになるべくバーモント州の専門大学院に在学中に、教育非営利団体VIAでプログラムディレクターとして活動を開始。卒業後はカリフォルニア州立大学バークレー校で異文化トレーニングスペシャリストとして勤務。帰国と同時に、大手通信企業のグローバル研修担当になり、その後メルカリに入社。D&Iチームを設立し、無意識バイアス研修や異文化コミュニケーション研修を作成。女性やLGBT+コミュニティのメンバーを対象としたソフトウェアエンジニア育成プログラム「Build@Mercari」、組織横断の社内委員会「D&I Council」などの施策を推進し、「LinkedIn:今、働きたい会社」トップ10に選出。専門分野はD&I組織戦略、異文化コミュニケーション&コンフリクトマネジメント。青山学院大学学士(国際政治経済)、SIT Graduate Institute修士(異文化サービス・リーダーシップ・マネジメントコース)

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