データサイエンティストがアルゴリズムで解決

 

 こうした課題を解決すべく、2021年4月に人財マッチング企画・推進部門が新設された。新任の江上部門長がマッチング精度向上の切り札として活用を決めたのがテクノロジーだ。人手で人財のプロフィールやジョブディスクリプションを読み込む代わりに、アルゴリズムを使うことにした。

 ブリヂストンはソリューション事業の強化のため、社内に多くのデータサイエンティストを抱えている。江上部門長は彼らと協働してジョブマッチング用のアルゴリズムを構築することとした。具体的には、データベースに登録された人財プロフィールとジョブディスクリプションの文章同士を突き合わせ、同じ単語がどの程度含まれているかを解析するシンプルなアルゴリズムを、最初のモックアップ版としてデータサイエンティストが作り上げた。その合致度(マッチ度)の高い順に、候補者の氏名が表示されるのだ。

 ただし一部のジョブディスクリプションは記述が粗すぎて、アルゴリズムによる解析の精度が必ずしも高くなかったため、ジョブディスクリプションの記述を見直した。また、新規登録者の増加を促すことで、少しずつではあるがアルゴリズムによるマッチングの精度も上がっており、2021年4月以降のジョブマッチングは軌道にのってきている。江上部門長は「自分自身がブリヂストンに転職したばかりで社内に人脈がないので、人海戦術によるマッチングはそもそも無理だった。テクノロジーに狙いを定めたことで、順調に滑り出していると思う。今後は自然言語解析だけでなく定量情報解析や重みづけなどを通してアルゴリズムの精度をさらに上げていくことで、新たなチャレンジをしたい社員と事業戦略を実現したい部門がWin-Winの関係になることを目指していく」と話す。

 現時点ではマッチング案件を確実に成立させることが成果指標の一つとなっているが、「将来はマッチングした人財が異動先で活躍し、いかにパフォーマンスを上げているかも指標にしていきたい。また成果を出すにはチームメンバーの最適な組み合わせが必要なので、人と人とのマッチングにもテクノロジーを活用するとともに、可視化されたマッチ度をベースに人財育成や採用といった他の人事施策への連携を実現していきたい」と江上部門長は話す。

 前任2社で人事責任者を経験した江上部門長は「人的資本経営」の定義を「事業戦略の実現と働く人の成長を両立すること、会社と社員が対等になるために関係性を強化すること」とし、そのうえでは「人財マッチング(人財配置を通じた最適なチームメンバー編成)が全ての出発点である」としている。今は戦略的キーポジションにおいてのマッチングを実施しているが、ゆくゆくは全社員に広げたいという。「新しいアサインメントが自分の新たなチャレンジや成長につながって、この会社で自身のパーパスも実現することができた。このチームや会社で働くことができて本当に良かった」という声を聴くために、試行錯誤しながらチャレンジしていく姿を見習いたい。