連載も大詰めを迎え、今回からは「組織開発と人材育成」をテーマに据える。企業が持続的に成長するためには、社長が一人で高みを目指して上り続けるのではなく、ナンバー2以降を育成する階段が必要になる。良い階段を作れるか、悪い階段になってしまうかが人事の腕の見せ所だ。

(写真:123RF)
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 雇用・人事領域で長らくジャーナリストを続けている私は、よくこんな相談を受けます。

 「どうやったらいい人が採用できるのでしょうか」

 そうしたとき、私は決まって、以下のように即答します。

 「いい会社を作れば、自然といい人が採用できますよ。それが一番の方法でしょう」

 当然、次にこんな質問が続きます。

 「いい会社って具体的にどういうことですか」

 答えはいろいろあるでしょうが、私はこう単純に考えています。

 「人が楽しんで育ち、業績を上げれば、会社は必然的にもうかり、そして、各人の給与もアップしますね。そういう会社はいい会社だと思います。このサイクルができれば、御社を目指す求職者も当たり前のように増えます。」

 さて、では、「人が楽しんで育ち業績を上げる」仕組みはどうやって作るのか。本章は、この経営の普遍的な課題に対して、ヒントとなる考え方を示しています。

ナンバー2以降が育つ「階段」を作るのが人事の役割

 もし、あなたが社長をしていて、利益を増やしたいと考えた場合、まずは、「どんな事業をしようか」と思いを巡らせるでしょう。サービスや商品を考え、それをどのように提供するか。経営者はこうしていつも、「もうかる事業」を作ろうとします。 ただ、これは個人事業の考え方でしょう。

 経営者一人でもうかる仕組みを作り、あとは皆、小さな歯車として決められたことをするだけの組織であれば、事業の成長は早晩止まってしまいます。社員は同じ仕事の繰り返しであり、面白みがわかないので、やる気をなくし、辞める人も増える。そして経営者は、自分だけが高みで考え、走り続けることで力尽きてしまって事業の成長は止まるのです。

 こんなふうに一部の人が走り続ける型の経営を続ける企業は、世の中にとても多く存在します。そうした会社では、得てして指導者は唯我独尊になり、孤独で疲れていきます。企業はこうした状態を、いち早く脱さなければいけません。

 目指すべき状態は、社長が高みに登ったら、それに続くナンバー2がいて、その下にさらにナンバー3……と、連綿と階段が連なっている状態です。

 多くの、とりわけ中小規模の企業の経営者は、自ら高みに登る努力と挑戦をいとわない人が多いものです。ところが、後続への階段を作っていない。それは、ロッククライミングをしているようなもので、誰も下から上ってこれない会社を作ってしまっているのです。

 この状態を脱するために重要なのが人事です。

 人事こそが、社内にしっかりと階段を作り、後続が上っていけるようにする。そこがわかっていない経営者は「経営と営業部門と技術部門があれば、管理部門など不要」と考えがちです。

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