前回は、多事業展開型の企業を俎上に上げた。多数の事業が並立すれば、キャリア類型も多数になる。この時の育成はどうなるか。とりわけ、全事業を統括せねばならない上級管理職は、どのように育てるか、に焦点を当てた。今回は、単一事業の企業を見ていく。単一事業でも、実は複数のキャリア類型が混在するケースがままある。ここでは、「本社―販売会社」という形で垂直分業を行っているケースなどをもとに、管理・企画部門と販売現場のキャリア類型の異なりを考えてみる。

(写真:123RF)
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 引き続き、社内に複数のキャリア類型が並立するケースについて考えてみましょう。それは、GEのようなマルチ事業型とは違い、単一事業でも起こり得ます。

「販売会社」とは欧米型ノンエリートそのもの

前回、キャリアの3類型について説明しましたが、実は、同じ事業の中にTypeAとTypeB,Cが並立する大企業というのはかなり多いのです。日本の会社は、これを実にうまく活用してHRM(人的資源管理)を行っています。販売部門と本社機能を分け、前者はTypeCとして販売会社に切り分け、本社と給与や昇進の体系を大きく変えてしまう、という方法です。この場合、販売会社に入れば、仕事は基本、「営業」のみで多くの人は他職への異動がほぼなくなります。

 また、多くの販売会社は県もしくはブロック(地方)単位に別資本に分かれているので、大掛かりな地域異動というものもなくなります。そして、上級役職者については本社からの出向で大半の席が埋まるため、昇進の天井も低い。つまり、「決められた仕事を決められた地域でし続ける」ということであり、それは即ち、欧米の大半の人(=ノンエリート)の生き方とよく似ている。しかも、です。こうした「地域特定×職務特定」での雇用であれば、その地域で該当職務がなくなる場合、整理解雇も容易であり、本社の総合職と異なって、リストラにも法的合理性が担保されやすい…。ほぼ欧米の仕組みだと気づかれましたか?  

 そう、日本企業はある面、脱日本型をうまくやっているのです。  

 前シリーズ「人事の組み立て」で何度も書きましたが、ジョブ型の本質とは、こうした欧米の「ノンエリート」の「決められた仕事を、決められた場所で、決められた給与にて」行い続ける仕組みのことなのです。昨今の日本企業のジョブ型は正反対で「エリートがより有意義に働く仕組み」とうたうという齟齬(そご)が起きています。この間違いに対して、鶴光太郎先生(慶応義塾大学大学院商学研究科教授)は「キラキラジョブ型」という言葉で揶揄(やゆ)しています(日経ビジネス電子版2021年9月21日掲載「『ジョブ型雇用はキラキラしてかっこいい』の大きな誤解」)  )。

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