「人事の役割は、長期的な経営戦略をにらんで計画的に人材育成すること」と言われるが、変化の激しい時代に「10年後に活躍する人材」が分かるのか。HRBP(HRビジネスパートナー)が果たすべき役割を考える。

(写真:123RF)
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 人事の世界では、もうかなり長いこと戦略的人事管理(ストラテジック・ヒューマンリソース・マネジメント、SHRM)という話が騒がれ続け、昨今はこうしたSHRMを司る人事スタッフのことをHRBP(HRビジネスパートナー)などと呼ぶようになってまいりました。そうして、「経営の意思を反映した戦略的人材育成をすることが人事の役割だ!」と高らかに謳われております。ただ、その実態は、ワンパターンで現実離れした話しかありません。

 前シリーズ「人事の組み立て」の「30年間空回りしたリーダー育成論争に終止符を」にてその話を喝破しましたが、要旨を再度説明しておきましょう。

ワンパターンな画餅でしかないSHRM

 まず、SHRMでは「10年後の経営」を規定します。そこから「将来必要となる人材像」を確定し、さらに「スキルセット(必要な能力・スキルの要素)」に落とす。それをもとに、育成計画を作る、というもの。

 なぜこれが無理筋かというと、変化の激しい現代において正確に10年後など想定できるわけがないし、そんな見えない将来に紐づけてスキルセットを作るのは危険だからです。

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 しかも、この「精緻なお遊び」にはけっこうな時間がかかります。

 見えない将来を語り合うのだから、当然、経営も人事も外部コンサルも、自信をもって「こうだ」といえる方向が決められないため、結局、今世間で言われている流行の人物像のスペックを総花的に入れたようなものになっていく。手法自体がもう20年以上も使い古されたもので、そこに、ありきたりの総花スペックが載るので、社の個性や個別環境など全く無視した、つまらない、使えないものになるのです。

 実際、欧米ではこんなスタティック(万全に計画し尽くした固定的)なLDP(リーダー育成計画)はしていません。10年後に起こりそうな大まかな変化軸(コンテクスト)を定め、その方向性だけは死守しながら、あとは個性に応じて自由に育成をする。結果、方向性は間違えない中で、多彩な人材が育ち、10年後に思いもよらない環境変化があったとしても、個性あふれるリーダー候補の中の誰かが適するだろう、とこんな育成法を取ります。

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 この大きな変化軸(コンテクスト)と個性尊重で、多様でありながら時代に合ったリーダーを作る手法を「コンティンジェンシー(状況に応じて形を変える)型」のLDPと呼びます。 つまり、スタティックなLDPからコンティンジェンシーなLDPへ。これが一つ目のキーワードです。

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