欧米企業のリーダー育成にはタフアサインメントや複数国での経験、昨今ではダイバーシティが欠かせない。なぜか。目的は「複雑な問題を解く力」を養うことにある。

(写真:123RF)
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 トップエクステンション(有能者をさらに成長させる)とLDP(リーダー育成計画)。多くの大企業が関心を持ち、がしかし、なかなかうまくいかないこの仕組みについて、今回はその肝となることを書いていくことにしましょう。

LDPの外形基準は示した。ただ本当に大切なこととは…

 すでにこのトップエクステンションを始める時期については、前回、書きました。それは「成長期が終わる時期を起点にすべき。TypeAなら早くとも入社10年目以降、TypeBなら遅くとも入社5年目以内」というのが一つの目安となるでしょう。

 育成計画としては、旧来型の詳細まで精緻に詰めたスタティック型ではなく、大筋(コンテクスト)を決め、あとは個性に任せるコンティンジェンシー型が良いと、そのアウトラインについても示しております。階段は難知識や難技術、といった意味のない資格等級ではなく、ステップアップするたびに、会社への寄与度(業績・影響力・職掌範囲)が高まるように設計してなければ意味がないと、設計基準も明らかにしました。

 そして、この階段を作り、上らせるのは他ならぬ人事と経営であり、現場に対しては搦(から)め手を使っても、この作業に協力を強いるという、分業体制も詳らかにしています。

 それでも、まだ階段として何を設計すればいいか、ピンと来ないのではありませんか?つまり、LDPとは何なのか、の本意があいまいだと思われるのです。

「複雑な課題を解く力」を鍛え続ける

 よく、LDPにはタフアサインメント(ハードで鍛えられる職務への任用)や3M(マルチファンクション、マルチリージョン、マルチジョブ)が付き物と言われます。また、昨今ではダイバーシティが欠かせないとも言われます。

 これらは一体なぜなのか、を突き詰めて考えたことがありますか?

 端的に言うと、それは「複雑な問題を解く力」を養っているということでしょう。たとえば、組織の末端にいるとき、目の前にある課題は単純です。営業であれば課せられた目標金額を売ること。経理でも人事でも同様でしょう。

 それが階段を上るにしたがって、課題が複雑になって行きます。一つは、技術や専門知識などの「アプリケーション」の難易度が増すことでそれは起きます。また、構成員の拡大によってもそれが起きます。そして、取引先や関連部署などステークホルダーの増大でも、複雑性は増していきます。

 こうして、課される課題の複雑さが増していく中で、それに対応できる力をつけることが、役職や等級アップの「裏に隠された」本意なのだとぜひ、気付いてください。

連続的な複雑性と、非連続な複雑性

 さて、複雑性の階段は、あるところまでは連続的な増大を見せます。たとえば、ヒラ営業→営業リーダー→営業課長→営業部長という役職アップは、それこそ、構成員・ステークホルダー・業績数値の拡大であり、複雑性は増しますが、根っこにあるのは、「営業目標を達成する」という同じ命題だけです。だからこうした複雑性の増大は、連続的な進化でしかないと言えるでしょう。

 ところが、こうした従来型の人的営業スタイルが通用しなくなり、ネット販売に仕組みを変えるという難題が課せられたらどうでしょう。これは連続的な複雑性アップとは明らかに異なりますよね?

 これが、非連続な複雑性の増大です。

 これは営業だけのことではなく、経理や人事でも全く同じです。通常組織で、役職にしたがって職掌範囲が広がっていく場合は連続的な進化。対して、たとえば経理ならシェアードマネジメント(外部分社化)とAIを使って効率化する課題に直面したら、これは非連続な進化となります。

HRBPが寄与しなければ「非連続な複雑性」対処力は培えない

 複雑性の増大にはこの「連続型」と「非連続型」の二つがあり、LDPもそこを意識しておく必要があります。組織設計においてもここが注意すべきポイントとなるでしょう。基本的に組織には以下の2形態があります。

1.構成員の増大に従って、レポートラインを作り役職を置く
たとえば、名古屋・東海営業部が5名なら課、30名になったら部、100名になったら事業部といった形
2.機能の拡大に従って、レポートラインを作り役職を置く
たとえば、水産課→食料品部→日用品事業部、もしくは、栃木営業所→北関東本部→東日本事業部といった形

 こうした形でステップアップして事業部長まで至った場合、たいていは連続的な複雑性アップしか経験していないので、非連続な複雑性には対処がままならないことが多いでしょう。かつての日本企業は、安定した環境で経営をしていたので、こうした「連続型」の複雑性アップで経営が行えたわけです。

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 ところが、昨今はグローバル化、IT/AI化、競合国の台頭、ダイバーシティ、エコロジーやエシックス(倫理学)の重要度アップなどにより、今までのやり方が通用しないルール変更がまま起こり、また、思いもよらない伏兵に急所を刺されることさえあります。

 だから、非連続的な複雑性アップへの対処能力をつけることが必要になるのです。逆に言えば、連続的な複雑性アップは従来通りレポートラインに沿った現場育成で多くの部分は充足するともいえるでしょう。

 つまり、経営目線で人事戦略を担うHRBP(HRビジネスパートナー)が考えるLDPの本意は

3.非連続的な複雑性に対処させるための、レポートライン外任用

ともいえるかもしれません。

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