組織と育成の最終回は、人事・経営を離れ、すべての働く人に対して、お送りしたい。良き上司、部下の育成がうまく、そして部下に信頼される上司には、どうしたらなれるか、をマネジメント理論に即して説明する。人事と経営が、「成長と儲けの階段」を作ったら、それを日々、部下に上らせていくのが、上司の役割だ。そのコツを、組織心理学の古典、ハーズバーグを中心に解説する。

(写真:123RF)
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 育成の階段の最後は、HRBP(HRビジネスパートナー)を離れて、現場でマネジメントをする上司の皆さんに、即席で、育成のツボを解説しておきます。もちろん、HRBPもこうした(理論に基づく)実務ノウハウは知っておいて損はないでしょう。

 部下がやる気を出し、喜んで成長の階段を上るように誘いざなうには、根本に彼らのやる気を引き出す仕組みが必要です。この点で著効な理論は、もはや古典となりますが、やはり米臨床心理学者のF・ハーズバーグ氏のモチベーションサイクル(動機付け理論)でしょう。

今でもよく効くマネジメントの古典

 その骨子は簡単です。

まず、部下の目の前に、彼らが上りたくなるような「階段」を明示する
ただ、部下が自力で上るのは難しいから、「指導・支援」をする
部下が一歩上れたら、「評価・賞賛」をする
そして、その成長を周囲にも認知させ、「承認」をとる
最後に、成長の対価として、「報酬(昇給など)」を与える

 これで、1サイクルが終わりです。一段上ったら、また最初に戻り、新たな「上りたくなる階段」を用意する……と永遠にこれを繰り返していれば、部下のやる気と成長は無尽蔵に続く。途中でサイクルを止めると、「マンネリ」や「堕落」が起きる。いたって簡単な流れなのに、なかなかうまく行かないのが現実ですね。

 そこで、この流れをスムーズにするための「ツボ」が必要となるのです。

 すでに私は、『マネジメントの基礎理論』(プレジデント社)、『部下をコントロールする黄金則』(ちくま新書)で、詳細にマネジメント術を説明してきましたが、要点を絞り、以下、説明していきます。詳細を知りたい方には、上記2書をお薦めします。

やる気のない人はいない。形が異なるだけ

 最初にまず、「いくら機会を与えて階段を示しても、部下が上りたがらない」。そういう場合は、どうしたら良いでしょう。

 上るべき要素は人事が「階段」として作っています。ただ、それをそのまま示したらダメ。「お肉が嫌いな子供には、ハンバーグにして目玉焼きを載せる」。つまり、上司が料理をしなければなりません。

 この料理を美味しくするためのコツは二つ。

 一つは、「部下の好みに合わせる」こと。「俺の部下はやる気がない」と嘆く上司の方、それは大きな間違いです。人間は心を揺り動かす動因(やる気のもと)を誰しも必ず持っているのです。やる気がなく見える人は、やる気がないのではなく、あなたと違うやる気の形をしている、ということ。

 アメリカの心理学者マレーによると、やる気の型は「口下手な営業をスターに育てる『職場との相性』」で示した通り28もあるのです。そのうち、上司や経営者がよく使うのは、「獲得」「優越」「達成」「承認」「支配」などせいぜい4~5個。それも成功者が好む偏ったものばかり。

 一方、「やる気がない」と言われる部下たちは、「奉仕貢献」「模倣」「ゲーム志向」など上司には思いもよらない動因をもっている。上司はそれに合わせて、課題が美味しく見えるように料理をしてあげることが大切です。部下が28の動因のどれに当たるかは、出来合いのアセスメントに頼るより、まずは観察をして、決め打ちでトライしてみてください。それで上手くいかないなら、別の動因に変える。そんな試行錯誤をしていると、新たな部下に接しても、彼らの志向を読み解くことができるようになっていくでしょう。

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