社内では役職が同じなら皆同じ給与。一方で会社間では同じ仕事でも給与には大きな差が。部門によって能力要件は異なるのに、職能等級は全社一律。こんな不思議な給与・等級管理をしているのは日本だけ。改革の兆しは生まれているが道のりは容易ではない。

(写真:123RF)
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 ここまでで人事のタテヨコナナメを熟知した皆さんに、脱日本型の最終課題を提示させていただきます。まだ触れていなかった日本型の最大の奇癖について、以下3問、修了試験として取り組んでみてください。

設問1
なぜ、課長や係長など役職が同じであれば、企業の中では、人事も総務も営業もシステムも、どこに行っても同じ給与なのですか。

 これ不思議に思いませんか。労働市場に出たら、人事の給与とエンジニアの給与と営業の給与はそれぞれ違うはずなのに、企業内なら営業も人事も総務も全部同じ給与。ここが不思議ということに多くの日本人は気付いておりません。

社内はどの部署も給与が一緒という謎

 会社にいる限り、どの仕事をしていても、役職や等級が一緒なら給与は同じ……。

 今、日本で標準的な人事制度は職能主義ですが、職能主義であったとしても、人事と経理と技術の職能価値は異なり、給与は別であってもいいはずです。脱日本型で「職能主義」か「職務主義」か「ジョブ型」かと騒がれ続けましたが、そのどれでも、「社内同一給」は維持されることが圧倒的多数でした。会社の中が全部同じ給与になっていることに疑問を持たない日本人は多いでしょう。

 人事制度作りに明るい人であれば、こんな抗弁をするかもしれません。

 「等級設定をするとき、各職務ごとに、サーベイ(有名なものでは職務評価システム「JOES」など)で、しっかり職責をそろえています。ですから、社内的に同一給なのはきちとした合理性がある」

 いやあ……。労働市場に出れば、職責が同じでも価値の希少性・習熟難易度などにより給与は違って当然です。ITと人事という全く異なる分野で、「職責が同じなら給与も一緒」となる方がやはりおかしいでしょう。

 労働市場から外部採用するときに、ここがフリクションになりますね。社内同一給のため、市場より給与が高く設定される職務は、社外に出て行く人がいなくなる。一方、安過ぎれば外部からは採れなくなる。これは間違いなく採用・離職障壁になっています。

 図で見ると、日本の給与体系は左のようになっていて役職が一緒なら全部同じ給与だけど、本来なら右のように、市場に応じて給与は決まってくるのが世界の常識といえるでしょう。

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同じ仕事をしているのになぜ給与が高いの?

 続いて2つ目の問題。

設問2
大手総合商社は高給です。が、商社らしい仕事をしている営業部が高給なのは分かりますが、なぜ、他社と似た仕事をしている人事や総務まで、給与が高いのでしょう。

 同じように流通系は大手でも給与水準が低いです。ただ、人事や経理や総務は他業界と似た仕事をしているのに、なぜ給与が低いのでしょうか。

 実際、メーカーの人事は、組合が非常に強くて、しかも高専卒、高卒といった様々なキャリアの人がいるので、金融や総合商社のような大卒ばかりのエリート集団よりも、労務管理は難しいものです。

 でも、人事の給与はメーカーの方が安いんです。これ即ち、職能で決まっているわけではなく、社内で決まっているということですよね。日本の給与は、職能・職務・成果・役割・ジョブ…以前に「社内で決まる」ことが第一です。

 だから、賃金水準が高い企業はどの職務でも高く、安い企業はどの職務も安い。先ほど、職務価値評価のサーベイの話をしましたが、人事や総務、経理を企業間でサーベイを行った場合、高給企業の職責と賃金が釣り合っていないことがすぐに分かるでしょう。

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 給与水準の高い企業では、どの職務も一律高く、そうでない企業は一律低い。これらは、欧米というか世界的にありえないことです。

 そう書くと、グローバル企業などで各国の人事制度に詳しい人は、また、以下のような反論をするかもしれません。

 「いや、フランスやスウェーデンでは、市場給とは別に逸脱条項や優位原則があり、各社ごとに給与を決められる『緩さ』がある。そして、高給設定した優良企業からは人が辞めず、固定的になっていく。だから日本と変わりはしない」。

 いやいや、待ってください。そうした企業個別に優遇賃金を設定している国でも、社内が全部一律などということは断じてありえません。どの職務でも市場より高賃金でしょうが、職務別はしっかり差がついており、当然、採りにくい職種には高いプレミアムを載せている。それが当たり前です。

 世にも不思議な社内同一給という仕組みがあるせいで、外から採るより、中で異動させるようになっていく。ここを壊さなければいけないのに、60年間忘れ去られている。ジョブ型、成果主義、コンピテンシー、職責、職能、役割給、このような看板をつけ返しても、社内同一給・社内同一基準という本当の問題は手つかずなのです。