科学的人事を目指してHRテックを導入。ところがなかなか成果が生まれない。その一因はデータにあり。「ゴミ」のデータをいくら入れても結果はゴミに終わる。気鋭の経営者兼研究者である伊達洋駆さんと海老原さんが激論(写真:三宅弘晃、編集協力:荻野進介、会場は千代田区神田神保町の会員制フォークソング居酒屋「ハナリー島」)

中野宗彦氏(以下、中野):本日のゲストは伊達洋駆さん。神戸大学大学院経営学研究科在籍中の2011年に創業したビジネスリサーチラボの代表取締役です。2013年には神戸大学大学院服部泰宏研究室と共同で採用学研究所を設立、所長も務めておられます。海老原さん、今回、伊達さんをお招きした趣旨のご説明をお願いします。

90%の確率で活躍人材を見抜けるというツールの真贋

海老原嗣生氏(以下、海老原):今回の対談では、学問が基礎におく科学的プロセスや理論を理解しようとせず、すぐに結論に飛びついてしまう企業人の迷妄と、そこにつけ込むHRテックベンダーのさもしさを語りたいと思ったんです。そうだとしたら、お相手は、経営者兼研究者、そしてHRテックにも詳しい伊達さんしかいないと。

 伊達さんの近著『人と組織の行動科学』(すばる舎)は「理論の説明」と「現実への着地」がセットで語られたすばらしい本です。組織心理や行動科学の世界を手っ取り早く知ることができ、企業人はもちろん、学部生にもぜひ読んでほしいと思いました。

伊達洋駆氏(以下、伊達):私の本をそういう形でご推薦いただき、ありがとうございます。海老原さんとは何度か講演会などでご一緒したことがあります。プライベートでも何度か飲みに行ったことがありますが、今回のようにお酒抜きのしらふでお話するのは初めてなので、ちょっと緊張していましたが、今日も海老原さんはこの会場で、既に結構飲んでおられたので(笑)、いつもと同じですね。

 HRテックにだまされるな、という海老原さんの言葉は本当にその通りだと思います。そのHRテックによるデータ分析や開発のお手伝いをしている私が言うのですから、間違いはありません。

 5、6年ほど前でしょうか、適性検査を出している会社の社長と話をしていたところ、その人が「うちのツールはすごいんだ。活躍できる人を90%の確率で見抜けるんだから」と自信満々に話すんです。私は冗談だと思い、「そんなツールなら、世界を征服できますよ」と返したら、怒られた。彼は本気だったんです。私にそう言っているとしたら、お客さんの人事にも話しているはずで、「そんなことはあり得ない」と否定されないから、同じことを延々と話し続けられるのでしょう。この社長の言を信じる人事がいるのだと知って、愕然(がくぜん)としました。

伊達洋駆氏
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伊達洋駆氏
ビジネスリサーチラボ代表取締役。 神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。 修士(経営学)。 同研究科在籍中、2009年にLLPビジネスリサーチラボを、2011年にビジネスリサーチラボを創業