労基署よりもはるかに目の細かい監督行政

 まず第1の浄化策は、2017年の法改正で設置された外国人技能実習機構です。技能実習に関する管理監督のための公的機関であり、強制捜査権を持っています。同機構は、監理団体に関して1年に一度、実習先企業には3年に一度、実地検査を行うことになっています。この定期視察・定期検査時の確認で違反が発覚した場合は、技能実習の停止や罰金・懲役が課されます。

 外国人技能実習機構には法務省の入国管理警備員や厚労省の労働基準監督官の現役スタッフが330人も集まっています。その数と実習先企業数(4万企業)との比率を考えると、通常の労働基準監督署(約3500人の労働基準監督官で400万事業者)よりも格段に濃い管理体制を敷いているといえるでしょう。

24時間母国語で対応する通報窓口

 それでも、こうした公的管理は投網的であり、抜け漏れが発生する可能性は高いでしょう。そこで、第2の策として、実習生からの相談や申告、通報の支援を行っています。外国人技能実習機構本部にはフリーダイヤルとメール窓口が設けられ、24時間母国語で対応しています。また、地方支所(13カ所)にも相談窓口を設け、電話だけでなく来所での相談にも対応しています。こうした相談窓口・相談方法については、入国後の導入研修の中で実習生に教え、同時に、技能検定案内のメールなどでも広報しており、違反として発覚した事件は、この通報がきっかけになったケースが多くなっています。

 さらなる対策として急ぐべきは、実習生の連絡手段の確保であり、実習先・監理団体への共用パソコンの設置義務、実習生への携帯電話貸与などが必要でしょう。

 ちなみに、技能実習生には「転職の自由がなく人権が侵害されている」と批判されることがありますが、機構側の相談窓口への通報後、違反が発覚した場合は、実習先企業の変更が行われています。長年かけて、制度は相当進化していることは知っておいてほしいところです。

問題の多くは母国ブローカー。2017年よりその取り締まりも厳格化

 さて、続いては実習生の故郷である、送り出し側の国での違法行為について、見てみましょう。

 長らく、技能実習生を巡っては以前から、不合理な保証金や違約金を取る「ブローカー(未認可団体)」が問題になってきました。ただ、それは送り出し国内で行われるため、日本政府としてはなかなか対応ができなかったのです。2010年の法改正では、日本国内で受け入れる監理団体において、送り出し側の機関に違法行為がないか確認することを義務づけましたが、これは実行性に乏しかったといえるでしょう。続いて、2017年には送り出し各国と「2国間取り決め」を締結していく方向に変えました。以後、相手国に違反機関の取り締まり義務を課し、違反した送り出し団体は免許停止を求める、という強い姿勢で臨んでいます。2021年7月末現在、受け入れ15カ国のうち、14カ国(中国のみ未締結)とこの取り決めを結んでいます。

 こうして、ようやくブローカーの排除が可能となり、保証金や違約金の詐取撲滅が一歩進みました。図表で見ても、補償金の詐取率は順源しています。2国間取り決め以前の来日者がまだ多数在留中のため、この数字は0にはなっていませんが、数年でさらに低下が見込まれるでしょう。

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 この取り決めをさらに強化し、違反が頻繁に発生した場合、該当団体だけでなく、その国からの受け入れを全面停止すること、さらには韓国のように実習生の送り出しは公的な機関しかできないようにすることなどまだまだ規制の強化はできそうです。ともあれ、相当なレベルにまで、対応が進んでいることは事実です。次回は、それでも技能実習制度では問題が多発するのはなぜか、に迫ります。

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