外国人技能実習生を巡っては、受け入れ先企業の法令違反の多さが問題とされがちだ。だが技能実習と関係ない企業への労働基準監督署の定期検査でも、実はかなりの確率で違反が発覚している。技能実習生問題とは日本人労働者の問題でもある。

(写真:123RF)
[画像のクリックで拡大表示]
(写真:123RF)

 この連載で2020年代は、全産業で少子高齢化との熾烈な戦いが繰り広げられることが、お分かりいただけたかと思います。何度も繰り返しますが、その主戦場となるのは、ホワイトカラーではなく非ホワイトカラーです。入退職人口の乖離から毎年40~50万人もの人材欠損が生まれ続ける中、その最後の一策として考えられるのが外国人就労です。なかでも現場人材を担うのは技能実習生(加えて、5年間働ける「特定技能」の資格取得者)となります。

 技能実習生についてはすでに30年もの歴史を有する制度であり、幾度もの法改正や監督機構の設置などにより、思っているよりもずいぶん、仕組みが改善されております。それでもこの制度には、いまだに問題が付きまといます。その原因はどこにあるのでしょうか。今回はその「今でも問題が残る」理由について迫っていきます。

技能実習生問題とは「日本人問題」でもある

 前回取り上げたように、「外国人実習生が働く事業所、7割で法令違反 厚労省調査」(日本経済新聞2017年8月10日)など技能実習生を巡るネガティブな報道は少なくありません。その理由はさもありなん、なのです。実は労働基準監督署が行う立ち入り検査の場合、技能実習と関係ない定期検査でも、7割で違反が発覚しているのです。それはつまり、技能実習の問題ではなく、日本企業全体の問題、私たち日本人の就労環境そのものの問題だと言えるでしょう。

 実際に、実習生受入れ企業の臨検で発覚した違反を図にしてみました。赤色の項目を見てほしいところです。安全基準、就業規則、労働条件、健康診断、衛生基準、賃金台帳、法令等の周知……。これらに不備があるようでは、実習生うんぬん以前に、企業として体をなしているとはいえません。青色の「賃金・待遇に関する」項目にしても、技能実習生だけでなく、日本人就労者に対しても同じことを行っているのではないでしょうか。そう、技能実習生問題とは同じ企業で働く日本人労働者の問題でもあるのです。

[画像のクリックで拡大表示]

実習生の過半は従業員9人以下の零細事業者で働く

 なぜここまでひどい、企業として体をなしていない状況になってしまうのか。その理由の1つは、技能実習生の受け入れ先企業の半数以上が従業員9人以下の零細企業だということ。よく日本の企業の99%は零細だと言いますが、これは企業数の話であり、総就業者に占める割合は15.2%しかありません。その事実と比べれば、技能実習生は異常なほど零細企業に偏って送り込まれているのが分かります。実習生にかかわる違法問題で報道されるのは大手系列の大企業が多いために、この事実にはなかなか気づけません。

[画像のクリックで拡大表示]

 こうした零細企業の多くは、家族労働の延長で経営されており、企業としての規則や制度が十分に整備されていません。そこに文化風習が異なる外国人が入ってくる。技能実習制度には、こうした悪い条件が重なっていることにも気づいてほしいところです。「雇主が風呂上がりに下着一枚で歩き回る」などという通報が普通にあるのですから、できるなら、監理監督機能を強化して問題事業者を取り締まり、排除していくべきです。ただ、日本の労基署はあまりにも人員不足のため、長らく零細事業者が放置されてきました。

 逆説的になるのですが、こうした企業が技能実習制度を活用すると、即、外国人技能実習機構の管理下に入り、労基署よりもはるかに厳しい監督措置を受けることになります。そのことが、日本全体の労働環境向上にプラスになるはずです。

 技能実習制度が普及したことで、既に労働環境の改善が進んだ事例があります。たとえば、農業や水産業などは従来、労働基準法の対象外でした。収穫期には週休二日や休業規定などを順守することが難しいといった事情があったからです。そのため、技能実習を実施すると問題が多発しました。そこで現在では、技能実習を行う場合は、労基法の規定を準用することが求められ、休業、残業、労働時間の規制対象となりました。技能実習制度が業界浄化を推し進めた事例と言えるでしょう。