人事の「作戦論」を展開する本連載。二つ目のテーマは組織風土だ。経営環境が変化し事業の変革が迫られる中、その担い手として「異能の人材」を求める経営者は少なくない。問題は、「はたしてそんな人材が、当社を選んでくれるのか」を考えていないことだ。

(写真:123RF)
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 二つ目の「戦場」は組織風土がテーマです。なぜ、会社にとって組織風土が必要かはさておき、まず根源的な話を一つ書いておきます。

 社内に閉塞感が漂っている。前向きさに欠け、言われたことしかしない社員たちが多く、事業が思うように拡大できない。こんな時に得てして経営者は「新風を吹かせるような人材を獲得し、社内に刺激を与えたい」と考えるものです。

 ただ、そんな話を持ち掛けられた場合、必ず私は厳しくこう伝えます。「そんな勝手な話はありません。経営者として失格ですよ」、と。こんな要望はどだい無理なのです。

「神スペック人材が入社して社風を変える」という幻想

 まず、経営陣が変えようと思って変えられない社風を、たった1人の下っ端が変えられるわけなどありません。

 二つ目に考えなければならないのは、「なぜ、そんな刺激的な人材が、御社に入ってくれるのか」という点です。行動的で魅力的なこんな人材は、いくらでも選ぶ会社があるでしょう。なのに、なぜ閉塞した御社を選ぶのでしょうか? ともすると、いい年をした経営者が皆、この当たり前のことを忘れてしまうのです。社風の変革に限ったことではありません。身の丈以上の「出来すぎ」「神スペック」人材を欲しがる経営者はあまたいます。彼らは皆、その願いを口にした時点では、「なぜ、そんな人材が自社を選んでくれるのか」という話を忘れています。

 いや、以下のような反論が返ってくるかもしれません。

 「私には熱意がある。だから彼らと気持ちで通じ合える」
 「今はダメだが、将来の計画がしっかりとある。それを伝えれば分かってもらえる」
 「彼には好きなようにやりたいことをやってもらう。自由があるんだ」

 大企業、中小企業問わず、言うことは大体、こんな感じでしょう。ところが、相手は同じような話を言われ慣れているのです。ですから言葉だけの空証文は信用されません。もし、彼らを説得したいのなら、口先だけでなく、「実例」を示すべきでしょう。異能人材がのびのび自由に面白いことをやって業績を伸ばしているという前例があれば、納得します。でも、それが本当なら、社内は閉塞していないでしょう。逆に実例を示せなければ、相手は「口先だけの約束」と見抜くのです。

 結局、「社風を変える人材を採用する」というのは絵空事で、そんな人材が欲しいなら先に社風を変えるべき、という話に尽きます。