採用時に候補者の能力や行動特性を測定するため、多くの企業が採用する適性検査。だが、採用の選抜には使わず、入社後の配属での参考程度にとどめる例も少なくない。適性検査は果たしてどこまで役に立つのか。

(写真:123RF)
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 前回は、企業と個人の相性(定着するかどうか)を見るための5軸について書きました。簡単に復習すると以下の通りとなります。

1.周囲との関係: 競争 ⇔ 協調
2. 思考の方向性: 革新 ⇔ 伝統
3. 判断の機軸: 情緒 ⇔ 理性
4. 評価の重点: 行動 ⇔ 思考
5. 仕事への姿勢: スピード ⇔ 緻密さ 

 そして、入社選考時に応募者の5軸を見るための「状況設定面接(SSI)」という手法について説明をいたしました。

 私はコンサルティングやセミナーなどでも、この話をよくします。そうすると、本当によく以下のような質問を受けます。

 「ならば、この5軸を適性検査か何かで知ることはできないのかな?」

 そうなんです。この5軸に限らず、人間性、人的能力、行動特性などについては、適性検査で何とか知ることができないか、という要望をいただくことが本当に多い。そこで、適性検査や採用アセスメントというものの構造やその限界、良い活用法について、2回にわたって書いていくことにいたします。

同じ能力・特性を持っている二人でも、その構成要素は全く異なる

 以下に示したのは、人間の特性や能力とはどのようなものかを説明するのによく使われる「氷山モデル」というものです。氷山というのは、水面に出ていて視認できる部分は全体の7分の1くらいであり、水面下の見えない部分が圧倒的に大きいですね。

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 人間の能力、特性なども同じです。「あの人は話がうまい」「あの人は度胸がある」など、目に見える特性が語られます。ただどうして「話がうまい」のか、「度胸があるのか」、その部分は、水面下に隠れていて、色々な要素が深く絡まっているのですね。 たとえば、話がうまい理由には以下のような要素があり、人によって、その構成も異なります。

・親和的で人が好き
・想像力があり、面白い発想がある
・洞察力があり、小さな変化を見逃さない
・分析力があり、原因と結果を語れる
・記憶力が高く、面白い話を覚えている
・経験が豊富で、語るべきエピソードが多い
・サービス精神が旺盛で、人を喜ばせるのが好き
・思考力が高く、当意即妙な受け答えができる

 まだまだ、要素はいくらでも挙げられるでしょう。こうした人的特性や経験、記憶などが絡まり合って、「うまく話す力」が発揮されるわけですね。だから、話のうまい人を二人並べても、水面下の要素はかなり異なることになります。

 同じように度胸があるという人も、その理由は全く別です。

 たとえば、ストレス耐性が弱く、物事に敏感に反応してしまう人、俗に言う「怖がり」でも、経験を積んで慣れた場面では、意外に度胸を発揮できます。さらにいうと、敏感な人は失敗に対して人一倍反省し、それをどう克服するか、悩んで考え抜くため、二度と失敗しないようになっていく、といったことなどもよくあります。結果、成功体験が増え、徐々に堂々とした行動をとれるようになったりもします。

 営業などはその典型でしょう。「彼は、元々、気にし過ぎでストレスを感じやすいタイプだったのに、いつのまにか立派になったよなぁ」という古株上司の評価に対して、そんなことを知らない後輩が「え?あの営業の鑑(かがみ)のような先輩が、入社したころはそんな感じだったんすか?」と驚く、なんて会話、よくそこらで交わされているのではありませんか?

 そう、人間の能力や行動というものは、複雑な要素が絡み合ってできているのです。表面上は同じように見える能力も、深く探れば、全く異なる要因で形成されている場合が多い。だから、簡単な性格テストなどで完全に把握することはできないものなのです。まずはそのことを頭に置いておいてください。