職務との相性がいい性格特性を持っていても、業績を上げるとは限らない。逆にその仕事には不向きな性格と思われる人が花開く場合も。向き不向きは入職適性でしかなく、その後の育成方法次第で、業績は大きく変えられる。

(写真:123RF)
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 前回書いた、性格特性の話を振り返っておきましょう。

・基礎的な性格はなかなか変わらない。アセスメント数値に変化が出るのは多くの場合、本質が変わったのではなく、自己認知の変化でしかない。
・つまり性格適性はかなり固定的なものであり、それにより、職務ごとの入職ストレスは大きく変わる。向いていない仕事だと定着は必然悪くなる。
・ただし、こうした入職適性と業績にはあまり関係性はない。業績の説明力として、性格は最大でも16%程度であり、残りの8割以上はその他の環境要因などからなる。だから向いている人でもまともにケアやフォローをしなければ腐ってしまうし、逆に、向いていない人でも手塩にかけてしっかり育てれば芽は出る。
・経営とは、「向いている人をとれば終わり」などというたやすいものではない。

 今回はまず、このコンテクストに沿って、2人の同期営業職の成長を考えてみましょう。

営業向きのA君、不向きのB君がなぜ逆転するのか?

 A君は、勇気やる気元気満々、ストレスに強く営業向き。

 B君は、内向的で思慮深く、傷つきやすいので営業に不向き。

 この2人が同じ会社・同じ支社で営業に配属されたとします。

 新人時代にはまず、学生風を吹き飛ばすための荒行として、飛び込みや名刺獲得を命じられます。A君はこんなのお茶の子さいさい、早々に頭角を現すでしょう。一方、B君はこの仕事がとても苦手で、会社に行くのも嫌になります。1年目の2人の業績差は、とても大きなものでした。

 A君の上司は成績優秀な彼を甘やかし、A君が好き勝手をやれるような放任状態にします。一方、B君の上司は、「かつて俺もお前と同じように悩んだ。ただ、悩むからこそ良い結果が出たんだぞ、諦めるな」と優しく、しかも「頭を使うポイント」などを指導します。

 客先に行ってもうまく話せないB君は人一倍、製品を勉強し、季節や製造ロットごとのチューニングなどを前もって考え、その点をお客様に先回りして提案するようになっていきます。一方、A君は飛び込みでコネを作った企業の社長に可愛がられ、毎晩飲みに連れ回され、楽しい日々を過ごしました。

 時がたち、もう飛び込みなどはさせられなくなり、顧客は固定されていきます。当然顔見知りのお客さんばかりだから、A君が「こんちわー」と元気に顔を見せたとしても、「何もないなら来なくていいよ」と言われ出します。一方、顧客に訪問するときには必ず、提案を携えていないと怖くて行けなかったB君は、訪問のたびに顧客から「こちらが気付いていなかったことを教えてくれて、本当にありがとう」とお礼を言われるようになっていきます。

 さて、そこから数年後――。B君は過去の膨大な経験から、どの会社に行っても、ある程度、そこでの悩み・課題が見えるようになっており、簡単な事前準備で、「かゆいところに手が届く」提案ができる営業職となっていました。顧客からは評価も厚く、過去に成功した事例などを語れるため、説得力も高まっています。だから、どこに行っても自信満々胸を張り、かつての「恐々、弱腰」な素地はかけらも見せません。

 一方、A君は急場しのぎでB君のやり方をまねては、ヘマをしています。今日も、「秋だから、湿気に強いチューニングをしてきました!」と勇んで客先にプロトタイプを持ち込んだのですが、「あのね、秋だと言っても今年は雨全然降ってないよ。カラッカラ。こんなの意味ないじゃん」とけんもほろろ。 両名に同行した新人社員はこんな感想を漏らしました。 「B先輩はいつでも堂々として、本当にできる営業の極みですね。反対にAさんは、頼りない。同じ4年目の社員とは思えないのですが・・・。」

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