活躍する人を事前に予想し、採用や配置に役立てるため、人材アセスメントツールが次々と開発されてきた。だがその進化は一筋縄ではいかない。アセスメント大手のあの会社も一敗地にまみれたことがあった。

(写真:123RF)
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 さて、いよいよ社風・性格特性・業績の3要素をどうしたらよいか、という話のクライマックスになってきました。結論に入る前に、アセスメントの活用ノウハウについて、今回は書いておくことにいたします。

 経営層や人事部門で、人物特性を何らかのアセスメントにより把握して活用したいと考える人は、多いものです。古今東西そうした研究事例は枚挙にいとまがありません。なので、一見、斬新に見えるようなアセスメント活用法も、たいていは、どこかの誰かがしっかり研究して、学術的な結論が出たものばかりです。

「活躍する人」の予想を的中させる理論なんてない?

 そうした集大成として、1960年代からアメリカの組織心理学会で言われるようになったのが「グレートマンズ・セオリーの破綻――活躍する人を事前に的中させる理論などはない」という言葉でした。米国の心理学者、デイビッド・マクレランド氏の「アントレプレナーと動因の関係性」研究など、有意性の高い選抜法も少数見られましたが、一般妥当性の高いものはほぼない、ということです。その理由はまず、こうした特性因子よりも育成環境が大事であり、不適な人もうまく育てれば大成する、好適な人も育成次第で腐るということで、既にこの連載でもお伝えしています。 そして、もう一つ、選抜理論の誤謬(ごびゅう)と言われるものがあります。

 実は、私のいたリクルート社では、アセスメントを使った人物選抜のための超有望商品が、何度もリリースされたことがありました。Web-IMR(2003年発売)、SPICE(2009年発売)などがそれにあたります。そして、どちらも「選抜理論の誤謬」を乗り越えることができず、主力商品にまでは育てられませんでした。ここではWeb-IMRについて詳細に解説し、なぜ、大規模選抜にアセスメントを活用することが難しいのか、を説明することにいたしましょう。

リクルートが一敗地にまみれた戦略的アセスメント商品

 Web-IMRとは多くの企業で活用されているリクルートのベストセラー適性検査「SPI」をベースにしています。この適性検査で調べられる性格資質の16因子について以下のような科学的なアプローチにより、「御社で好業績を上げる人を見つける」というのがその触れ込みでした。

 この商品は、まず、多数の自社社員にSPIをウェブで受験してもらうことから始まります。次に、受験した社員のうち、好業績者(Good=G層)と低業績者(Poor=P層)を抽出し、それぞれの性格因子傾向を見ていきます。仮にある会社のG層とP層では、内向性・自責性・敏感性・身体活動性・達成意欲で大きな違いがみられたとします。この場合、これら6因子が「業績を分ける尺度」となります(この調査法をGP分析と呼びます)。

 たとえば、「自責性(自分を責める傾向)」に関して言えば、好業績者の8割が4以下のスコアに集まり、一方で、低業績者の8割が4以上のスコアとなりました。この場合、自責性のスコア4を選抜基準として、これ以下の人を合格させることにしたとしましょう。そうすると、合格者は将来好業績になる人が多く、低業績者は少ないことになるはずです。

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 こうしてGP分析の結果判明した6因子について、それぞれが好業績者の8割が集まるライン(80パーセンタイル)を選抜基準として設けます。この6因子の基準値を全部をクリアした人の場合、好業績になる確率は高く、低業績になる確率は低いということになるでしょう。

 人気企業の新卒採用などでは、1万人以上もの応募者が集まりますが、新卒なので職歴やスキルでは選抜しようがないから、途方に暮れます。そんな時に、Web-IMRを活用して、応募者をあらかじめ1000人まで絞り、「濃い集団」にしてから面接をすれば、採用はより実りあるものになる――。これがWeb-IMRのもくろみでした。 ところが、この商品が泣かず飛ばずになってしまったのです。