いよいよ採用の「作戦」に踏み込む。「無名だから」「中小だから」「地方だから」いい学生が採れない、と嘆く企業は多いが、それでも採れている企業はある。その理由をあの超人気企業の歴史から学ぼう。

(写真:123RF)
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 人事の「作戦」を考える本連載。第1作戦では、「社会の中期的な変化」という外部環境、すなわち「戦場」の対策を、続いて第2作戦では、「組織風土」という内部環境、つまり「自軍」の状況把握を行いました。第3作戦では、戦力補充に当たる採用について、本格的に論を展開していきたいと思います。

当たり前の言い訳しか出てこない「採れない理由」

 本作戦の趣旨は「無手勝流」――この言葉は剣豪で鳴る塚原卜伝の言に端を発すると言われています。卜伝といえば、宮本武蔵による背後からの不意討ちに対して、くるりと振り返り、囲炉裏の鍋の蓋で受けた逸話が有名ですね(これは後世の創作なのですが)。同様に、渡し船の中で丸腰の卜伝が武者修行者から真剣勝負を挑まれた時、「勝負を受けて立つ」と言い、血気盛んなこの若造を小島に降ろしたあと、船を竿で突き放して岸を離れた。その時に発した言葉が、「戦わず勝つ、これが無手勝流」だそうです。 そこから転じて、「策略を施して戦いに勝つ」「相手が思いもよらない手で勝つ」「どんなことをしても勝つ」という意に用いられるようになっています。

 表現は野蛮になりますが、人事を生業に例えるなら、人材育成は栽培であり、採用は狩猟に当たります。数ある競合と応募者を獲り合うのだから、知恵と体力の限りを尽くして、戦い抜かねば勝てないでしょう。ところが、多くの企業は至って「常識的」な範囲でしか採用活動をしていません。

 多くの企業から採用の相談を受けますが、往々にして彼らは、こう言います。

 「考えられることは全てやった。アイデアを出し尽くした」

 ただ、それはあくまでも「常識的な範囲」で、という限定句がついています。にもかかわらず、彼らはこう言います。
「この職種では難しい」
「地方だから都会に負ける」
「人気や知名度がない」
「資金が足りない」
「中小は厳しい」

 果ては、「少子高齢化でもう構造的に採れない」と続く。採用難の企業はこんなことを言いがちではありませんか?

 ただ、よく考えてほしいのです。まず、第1作戦で見た通り、少子高齢化の現在でも大学生の数は30年前より6割も増えており、決して「昔より総数が減っている」わけではないということ。復習がてら付け加えるならば、人口が減っている中で大学生が増えたので、「質」が落ちているのではないか、という疑問も間違いです。

 その昔は、世の中に性別役割分担という古い感覚が染みつき、そのため、女性の大学進学率が1割台前半しかなく、その少数の4大女性も多くは女子大の家政科に通っていました。確かに学年人口は今の倍ありましたが、その半分の女性をスポイルするという無駄を社会がしていたのです。現在は、人口こそ半分に減っていますが、男女平等に大学に進学しているので、大学生の質が目に見えて落ちるということは起きていないのです。 「少子化のせいでかつてよりもいい人が採れない」と嘆く企業は、即ち、旧来の男社会のままの頭でいることが一番の大きな問題でしょう。男女共同参画型の企業経営に転換していれば、「少子化による」人材不足は、ホワイトカラーではあまり起きません。