「欲しい人材を明確化する」だけではその人たちに振り向いてもらえない。応募を増やすためには、「欲しい人材が喜ぶネタ」を用意しよう。それをキャラにまで転化できればピカピカの人材を集めるのも夢ではない。

(写真:123RF)
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 採用成功の基本は「他と違うこと」「顧客(応募者)利益」と前回まで説明してきました。当たり前のことなのに、多くの企業が忘れがちなことをお話ししておきます。

人気女優に振り向いてもらうには?

 採用成功のポイントとして「欲しい人材を明確化する」ことが挙げられます。ただ、それは本当に初歩中の初歩であり、解決策ではありません。

 私は長らくリクルートの転職エージェントで企画職に就いておりました。転職エージェントでは、クライアント企業から求人をいただいてくる「リクルーティング・アドバイザー(RA)」と、求職者の相談を受ける「キャリア・アドバイザー(CA)」が情報交換する場を設けています。それを情報共有会というのですが、ここに出ると、できる(紹介が成功する)CAとそうではないCAの違いが一目でわかってしまうのです。

 業績の良くないCAは、企業担当のRAに向かい、「この求人はどんな人なら採用されるのか?」と採用スペックを事細かに聞くのですね。対して、できるCAは加えて、「採用ターゲットが喜ぶようなネタ(彼らが欲する待遇や環境、キャリア展望など)はあるか?」を聞く。

 この違い、分かりますか?

 採用スペックが明確になっても、それは「企業側の都合」の見える化であって、よほどの人気企業でない限り、応募する側には何の意欲喚起にもなりません。応募を増やすためには、「応募する人たちが喜ぶネタ」を用意しなければならない。給料や役職などの即物的な話だけではなく、研究素材の面白さ、エンジニアとしての成長、職掌範囲の広さと裁量権、周囲のメンバーの魅力、キャリアパス、自由度などなど、欲しい人材が喜ぶネタは多種多様にあるでしょう。それを見繕って伝えるからこそ、応募者の心に響くのです。

 分かりやすい例でお話ししましょう。たとえば、あなたが人気女優の中条あやみさんを好きだとします。

 「私は中条あやみさんが好きだ」と自分のスペックを明確化したとしても、絶対振り向いてくれはしないでしょう。アピールするなら、彼女が喜ぶような「ネタ」を語らなければなりません。この「顧客利益」観点が企業側に足りないことが多すぎるのです。

4つのネタでエンジニアの大量獲得に成功したIT企業

 そしてもう一つ。そこそこネタがあった場合、それを闇雲に羅列する企業が多いのですが、求人広告でそれをやると、まず読むのに時間がかかるし、雑多な情報により頭が混乱もします。エージェントでも、自動マッチングで応募者に求人を送付するので、同じことが起きます。CAが応募者に直接情報を伝える場合も、企業→RA→CA→求職者という伝言リレーとなるので、雑多な情報だと情報ロスや伝達ミスが起こるでしょう。

 だから、情報の整理が必要なのです。ところがこのノウハウが十分に足りておりません。ここでも使えるのが前に書いた「キャラ立て」なのです。少しお見せしましょう。

 たとえば、アグレックスというシステム開発の上場企業(現在はTISの子会社となり上場廃止)は、転職エージェントを通して大量の中途採用を行ってきました。システム・エンジニア(SE)の募集は今も昔も厳しいものがあるのに、同社は無数のライバルに打ち勝って中途採用を成功させています。その理由は、

1. GMARCHクラス以上の卒業者であれば、専攻不問
2. 26・27歳までであれば、職歴も不問
3. 丁寧な育成システムで、素人を一人前のSEに育て上げる
4. 結果、30歳くらいでNECや富士通など上流大手に引き抜かれる人も多々

 といった「ネタ」があるからです。同社については、技術力や株主、取引先などまだまだネタは宝庫ですが、とりあえず、IT業界を全く知らない人には、上記の4つで十分でしょう。緩いスペックと丁寧な育成、そして将来のステップアップ転職に絞って、未経験者にアプローチするわけです。

 20代中盤だと新卒で何となく入ってしまった会社で悩んでいる人は多いでしょう。さらに、営業職だとノルマにうんざりしていて、「そういうのがない世界に行きたい」「理系って羨ましいなぁ」と考えている若者は相当数に上ります。CAはそういう求職者にアプローチを掛けるわけです。ネタはこの4つで十分。GMARCH以上の悩み多き若者がいたら、まずこの会社を推す。ここまでの流れが成り立つのは、「振り向かせるネタ」がコンパクトに絞られているからです。

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