ウェルビーイングは従来の健康経営や福利厚生改善の延長上のものとして捉えられることも多いが、経営課題として取り組むべき理由はそうではない。従業員のウェルビーイング向上で目指すものとは何か。

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ほぼ全ての人事制度は「手挙げ」で動く

 「本来、健康の定義とは、メンタル不調や病気を予防するといったマイナスからゼロの状態に持っていくことではなく『肉体的、精神的、社会的にも全てが満たされた状態』のウェルビーイングであることを指す」

 医師で、丸井グループ専属産業医を務める小島玲子取締役執行役員CWO(チーフ・ウェルビーイング・オフィサー)はこのように話す。丸井グループでは2016年から、全従業員が応募できる「ウェルビーイング経営推進プロジェクト」を推進してきた。

 このプロジェクトへの参加は上意下達ではない。参加したい従業員は応募理由の作文を書き、部署や氏名を隠した状態で関係者が審査、プロジェクトメンバーに選出される。その以前から丸井グループでは青井浩社長が中心となり、プロジェクトへの参加、異動、研修受講、昇給といったほぼ全ての人事で社員が手挙げするカルチャーをつくってきた。1期1年、メンバー総入れ替えで活動を広げてきたウェルビーイング経営推進プロジェクトはその象徴的な取り組みといえるだろう。

 丸井グループが「手挙げ」にこだわる理由は社員の主体性を引き出すことにある。ビジネス環境の急速な変化を背景に、新業態や新事業を創出していくには、従業員の自律的な思考と行動が不可欠だ。自分の力を発揮して、主体的に働く従業員はより良く在る状態、つまりウェルビーイングであるといえるだろう。そして、自律した「個」の多様性を発揮するには、一人ひとりのウェルビーイングを認め合う組織風土の醸成が必要となる。