「自分は何者か」アイデンティティからキャリアを議論

 金融業界の変革スピードも非常に速くなり、銀行、証券、信託といった事業領域の垣根も低くなりつつある。それに伴い、社員のキャリアも必要とされる専門性も大きく変わってきた。社員それぞれの能力や適性を踏まえ、面談を通じてキャリアに関する本人の志向は確認している。ただし、これはなかなか難しい作業だ。グループ内のいかなる職務にも従事し、そこで活躍できる可能性はある一方、その中で自分にとって何が良い選択なのかは簡単には分からない。社員一人ひとりの能力を最大限発揮させていくためにも、キャリア教育や管理職教育を通じて、人事は「社員に寄り添い伴走していく」姿勢を明確に打ち出していきたい。

 どんな専門性を持ってどんなキャリアを築いていくかについて一番迷っているのは社員だ。周囲に流されてはいけないし、自分自身を枠に当てはめて強みやキャリアを挙げようとするのも正しくない。能力、資質、性格的なものも含めて自分は何者なのかというアイデンティティをしっかり考えることが重要だ。それが本人の成長にもつながるし、会社への貢献にもつながる。

 2022年は、社員がアイデンティティとキャリアを考えるための教育を充実させていく。具体的には役職別研修とは別に、同世代の社員でキャリアを議論し考える研修を実施する。この対象は新卒入社して3~4年後の20代社員、30代社員そして40代社員だ。特に重視しているのが20代だ。30歳くらいになると、仕事にある程度慣れてきてラーニングカーブが低くなり「自分がやりたかったことはこれだったのか」と悩む社員も多い。その前に軌道修正を図りたい。また、50代社員にも広げていきたい。

 研修では、日常業務から離れ、いったん「素」になって議論できる場を作り、先輩から「自分が20代の時どうだったか」といった話も聞く。上司が部下に自分の成功体験を語るだけでは今や通用しない。世代間の意識の違いは今に始まったことではないが、悩みを抱え込まずお互い議論することや上司によるキャリア支援が重要だ。上司である管理職にはこうしたコミュニケーションができるように人事がサポートしていく。

「55歳で転籍」の慣行をグループ一体で見直し

 2023年度に向けて、シニア社員の人事制度や運営をグループ一体で変えていこうとしている。現在はグループ内で慣行がかなり異なる。例えば銀行も証券も定年は60歳だが、銀行では50歳を過ぎると、子会社や取引先など社外に転籍していくケースが多い。銀行では55歳で職員[注]から専任職員になると報酬が大幅に下がり、社員は外に出たほうが経済的メリットを享受できることが、このシステムを後押ししてきた。こうした仕掛けは、組織の新陳代謝を進めるうえではいいが、今後も持続可能な仕組みなのかについては疑問がある。

 これからいわゆるバブル世代入社が定年を迎える時期に入る。これより下の世代は絶対数が足りないため、バブル世代をある程度リテインしていかないと業務運用が難しい面が出てくる。組織の新陳代謝を進めながらシニア層を活用していくには、例えば、管理職は役職を外すが、現場の実務を支えているマイスター的な存在の社員は、55歳以降も処遇を変更しないといった措置が検討に値する。

[注]2021年10月、みずほFGでは総合職と一般職の区分を廃止した。