「施策疲れ」を反省に、2023年は社員参加型で人事方針を決める

 当社は、クライアント・オリエンテッドなビジネスモデルを追求している。従って、人事の観点からは、いわゆるジョブ型雇用が適切であるとは考えていない。ゴールは「お客様のために高い付加価値を提供する」人材になることであり、そのためのキャリアは複線的であって良い。キャリアフィールド運営は、社員にキャリアの道筋を示していく方策である。社員は、自分の立ち位置を理解し、中長期的な視点に立ち、各々の事業領域における実戦の中で専門性を磨いていくことに目的意識を持って欲しいと考えている。しかし矢継ぎ早に打ち出してきた施策によって、一部の社員は「施策疲れ」を感じているのも事実だ。2年間やってきたことは社員の利益になっているのかを改めて問い直すことが必要だと感じている。

 例えば新人事戦略では、ビジネスサイド(事業部門)が職務要件を定義し、それに基づいた「専門性コミュニケーションシート」を使って上司と部下が1on1などを実施することになっている。ところが、シートの内容が詳細すぎて、社員も上司もこのシートを使いこなせていないのが実情だ。シートを作ることが目的になって内容がマニアックになり、どう使うかが落とし込まれていなかった。人事の自己満足にならないように、改めて社員モニターなどの声を聞くことから始めている。

 2022年はできるだけ大きな施策を打たず、じっと体をなじませる期間と捉えている。経営と社員の方向が一致しないと人事は成り立たない。新人事戦略では経営陣の方針は明示したが、コミュニケーションが一方通行になり「社員のナラティブ」が欠落していた。施策ではなく、社員との徹底的な対話を進めていくことが一番に取り組むべき課題であると認識している。

 現状は、銀行・信託と証券は全く異なる人事のプラットフォームで運営しているが、2023年度に向けて一体的なプラットフォームにリフォームしていくことを検討している。新しい人事の運営については、社員も参加する形で共に創り上げていく。人事制度や運営は会社が社員に押し付けるものではなく、自分事として、自然と社員の心と体に染みわたっていくようにしていきたい。

 人的資本に関する経営指標としては、女性管理職比率、従業員意識調査の結果などを開示するのが一般的であることは理解している。

 例えば、女性管理者比率については、課長相当職は相応の水準に達してきているが、部長相当職はまだ低水準にとどまっている。事実として、こうした結果は既に開示しているが、そのことと人的資本について表現することの関係が何かについては、一から整理をしていきたい。もちろん、会社にとって都合が良い数字だけを開示することに意味がない。目下、人的資本に対する投資家の関心が高まっていることは承知しており、早急に開示内容の充実が求められている。一気に完成度を上げるということではなく、投資家エンゲージメントを行いながら、徐々に改善させていく方向なのではないか。ガバナンスにとって極めて重要な事項であり、取締役会におけるしっかりとした議論が必要だ。(談)