リモートワーク浸透によって仕事の意義やキャリア観を見直す人が増えている。そこで鍵となるのが社内における「対話」だ。例えば、上司と部下間の対話を深める手法の一つとしてコーチングが注目されている。今回は、コーチングサービスを手掛けるスタートアップで、DeNAの坪井一樹氏が注目するTHE COACHを取材した。さらにこの取材記事を読んで、そのコンセプトやソリューションをどのように見るか。複数の企業人事を歴任し、現在は組織コンサルティングを手掛けるファンリーシュの志水静香氏にコメントを寄せてもらった。

 オンラインコーチングスクール「THE COACH Academy」など、コーチングサービスを通じて個人や組織の内的な成長を支援するTHE COACH(東京・渋谷)。同社は、個人向け事業から立ち上げ、さらに法人向けのサービス提供や、教育機関との連携など、取り組みの幅を広げている。THE COACHでは、コーチングを「気づきと行動が生まれるプロセス」と捉える。

 コーチングの必要性について、事業責任者を務めるTHE COACH取締役の松浦瞳氏は、「生き方や働き方が変化し、自分自身がどういう人生を選ぶのかを、自分に向き合って選択する重要性が高まっています。さらに、企業では組織と個人それぞれのミッションやパーパスを紐づけることが求められています。個人にとっても、組織にとっても、内的な成長を支援するコーチング的な関わりが、変化への対応に貢献できる手法のひとつです」と説明する。

コーチングマインドを社会に広げる

 THE COACHは2019年11月に設立、2020年7月にサービスを開始した。創業者で代表の小林 加奈氏のもとに、松浦氏やコーチング理論及びカリキュラムの開発責任者を務める取締役の岡田裕介氏などが集まり、ビジネスを拡大している。コーチングスクールなどを手掛けるようになったのは、人々の多様なあり方を応援したい、多様な社会を実現したいという思いからだという。

THE COACH 取締役 松浦 瞳 氏(写真右)、同取締役 岡田 裕介 氏(写真左)
THE COACH 取締役 松浦 瞳 氏(写真右)、同取締役 岡田 裕介 氏(写真左)
(写真提供:THE COACH)

 コーチングでは、コーチとクライアントが対話をしながら、クライアントの内面にある答えを引き出していく。「目の前にいる人の気づきや行動が生まれるプロセス」(松浦氏)だ。さらにコーチング的な組織開発の手法には、個人の力を引き出すだけでなく、チーム・組織の繋がりを生み出す効果がある。同社ではコーチングをスキルだけではなく、人としてのあり方だと捉えている。「THE COACHのミッションは、コーチングマインドを社会に広げることです」(松浦氏)というように、コーチングのテクニックを一部の人に伝授するのではなく、コーチングマインドが広がり、より良い社会を作るための手助けをしたいという考えが根本にある。

 コーチングマインドが社会のOS(基本ソフト)として広がるために、コーチングスクールやコーチングプラットフォームを提供し、コーチングマインドやコーチングの体験を多くの人に知ってもらう。そのために、THE COACHでは、プロを目指せるオンラインのコーチングスクールとしての「THE COACH Academy」を2020年に提供、企業からの問い合わせも多く、法人向けのコーチング型組織開発サービスにも事業を広げている。これらを主事業としながら、プロコーチとのマッチングを提供する「THE COACH Meet」などの事業を展開している。

コーチを受ける「体験」からコーチングを学ぶ

 基幹ビジネスであるTHE COACH Academyは、完全オンラインでサービスを提供している。現役のプロコーチによる直接指導が受けられるほか、国際コーチング連盟(ICF)から継続コーチ専門教育(CCE)に認定されており、世界標準のプログラムを提供している。その上で岡田氏は「THE COACH Academyは、これからの時代にフィットするコーチング手法を、既存の多様な概念や理論、心理学などを統合したインテグレーションモデルとして開発して届けることが特徴です」と語る。ある流派のコーチングのメソッドを広めるのではなく、THE COACHが独自に研究開発した新しいメソッドを提供し続けていく考えだ。