経営と組織改革における新しいコンセプトを打ち出すHRスタートアップが増えている。働く人をひきつける組織を創り、組織と個人の成長をシンクロさせていくにはどうしたらよいか。採用、育成、配置、コミュニケーション改革─次々にリリースされる新しいソリューションで、人事業界の若手キーパーソンが「自分ごと」として注目するHRスタートアップを編集部が取材していく。連載1回目は日本人材マネジメント協会理事の土橋隼人氏が注目するBeatrust(ビートラスト)だ。2020年3月に創業した同社では社内人材を可視化する検索システムを展開する。さらにこの取材記事を読んで、同社のコンセプトやソリューションをどのように見るか。人事業界のインフルエンサーでもある、35 CoCreationの桜庭理奈氏、シンギュレイトの鹿内学氏からコメントを寄せてもらった。
イノベーションを起こすにはどうしたらいいか。特に日本企業ではイノベーションが起こりにくい。Beatrust 代表取締役 CEOの原邦雄氏は、シリコンバレーでの業務経験や、マイクロソフト日本法人、グーグル日本法人の執行役員など幅広い経歴から、イノベーションを支えるデジタルインフラが日本では不足していると分析した。「イノベーション実現に向けたデジタルインフラを日本の企業が使ってもらえるようにと2020年3月に設立したのがBeatrustです」(原氏)。
原氏は「以前在籍していた米国IT企業では、社内で相談する相手や、課題に対して経験や知見のある人を探すシステムやツールが整っていました。従業員同士がつながることで自走型の組織ができ、イノベーションが誘発されます。日本でその手助けをする人材可視化ツールとして2020年12月より『Beatrust People』の提供を開始しました」と語る。

登録した多様な「タグ」で多様な相手社員とマッチング
Beatrust Peopleは、タグベースの人材可視化、検索システムである。「社内向けの人材検索プラットフォーム」(原氏)であり、従業員向けの新規コミュニケーションツールという紹介の仕方をされることもある。特徴はタグを多用していることだ。
Beatrust Peopleのページには、従業員の多様なプロフィール情報が掲載されている。もちろんテキストベースの業務経歴や現在の担当業務などのプロフィ―ルもあるが、目につくのは数多くのタグだ。強み、経験、スキルから趣味や嗜好といったバックグラウンドまで、多様なタグがその人となりを立体的に表現している。「マーケティング」「事業開発」などの業務を表すものから、「AI」「C++」など技術への造詣、「ラーメン」「サッカー」「バッハ」まで、幅広いタグが人を表す。

こうしたタグをベースにして、社内の人材のマッチングを容易にする。必要に応じてタグを使って人を探すことで、新しいアイデアへの意見を求めたり、プロジェクトへの参加を要請したりといった交流が、それまで知らない人同士で動き始める。
タグは、自分で自己紹介としてつけるほかに、他己紹介のように他の従業員がその人を表す新しいタグを推薦することもできる。Beatrust Peopleにはスキルの自動抽出エンジンが用意され、コミュニケーションデータや作成したプレゼンのファイル、最新の人事データなどから機械学習でタグを自動的に推測し、抽出してくれる。自分でタグを作らなくても手軽にアップデートできる仕組みだ。
日本人材マネジメント協会理事の土橋隼人氏もこの仕組みに着目する。なぜなら、従業員同士が社内の「知りたい情報や人」に素早くアクセスし結びつくことでコラボレーションやイノベーションを促進するが「この領域のサービスやツールはまだ少ない」(土橋氏)からだ。
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