労働生産性や離職率に大きく関わるとして注目を集める「エンゲージメント」。ただし、この測定が簡単ではない上に、可視化して組織課題解決につなげる際にも課題がある。「ピープルアナリティクス・カンファレンス2021」(2021年11月25日にオンライン開催)において、SmartHRの重松裕三氏が、エンゲージメントが注目される背景と、測定・分析の課題について解説した。(取材・文=池谷 つばさ)

エンゲージメントが生産性向上と離職率低下の鍵を握る

 現在、国内では少子高齢化に伴う将来的な労働人口の減少が社会的な問題となっている。こうした環境下で企業が従来の労働生産力を維持するには、従業員一人当たりの労働生産性を高めるとともに、従業員の離職を防ぐ仕組みづくりを進めなければならない。

 重松氏は「働き手や働き方の多様化により、従業員の立場や価値観も画一的なものではなくなった。この中で従業員を企業に引き付け続けて、パフォーマンスを維持してもらうことが難しくなりつつある」と指摘する。こうした状況の中で現在、従業員のエンゲージメントの向上が強く求められるようになっている。

 エンゲージメントには、仕事への積極性に関わる「ワークエンゲージメント」と、組織への愛着や仕事への満足感である「従業員エンゲージメント」の2種類がある。重松氏は厚生労働省の資料を参照しつつ、「エンゲージメントと労働生産性には正の相関関係があることが示唆されている」と説明する。さらに、組織の活性化や従業員のモチベーション向上、離職率低下に大きく影響を与える可能性が高いという。

 エンゲージメントのスコアは、従業員サーベイを通じて測定する。従業員の考えを聴取し、その結果と企業が重視する価値観を比較することで、優先的に取り組むべき経営・人事の課題を特定し、解決に向けたアクションを取りやすくなる。

 重松氏は具体的な事例として、ある商社での取り組みを紹介する。同社ではサーベイの結果、新規事業部門と比べて既存事業部門では、企業の方向性への共感が乏しいと分かった。既存事業部門の従業員が、新規事業の展開や自身のキャリアに不安感を覚えていると推測されたため、「新規事業の納得感を高めるための説明を行い、キャリアの支援体制を整備するなどの施策を展開した」(重松氏)という。

重松 裕三 氏
重松 裕三 氏
SmartHR プロダクトマーケティングマネージャー(写真提供:SmartHR)