データを活用したピープルアナリティクスをさらに追求

 セッションの後半では、齋藤氏がHRマネジメントにおけるデータ活用の実情を解説した。同氏は、まずテクノロジーがどのような領域に貢献するかを整理した「HRテクノロジーの3Eモデル」を説明した。このモデルによると「人事業務の効率化(Efficiency))」「人事における意思決定精度の向上(Effectiveness)」「従業員への経験価値の向上(Experience)」という3つが、HRテクノロジーの導入で大きな効果が表れる領域だという。

齋藤 冠郎 氏
齋藤 冠郎 氏
PwCコンサルティング 組織人事チェンジマネジメント シニアマネージャー(写真提供:PwCコンサルティング)

 次いで、齋藤氏はデータ活用が大きな成果を上げる実例として、戦略的人員計画策定(SWP)を取り上げた。同氏は「多くのCEO(最高経営責任者)は人材こそが持続的経済価値の源泉だと考えている」と前置きし、調査結果を紹介した。72%の企業がスキルと定義の獲得に懸念を持ち、75%のCEOが採用と育成の手法の根本的な見直しが必要だと感じ、93%のCEOがタレントマネジメント戦略の変革を強く求めているというものだ。この結果から分かることは「人材獲得のためのプランニングに対する変革の必要性が高まっている」(齋藤氏)ということだ。

 SWPを実践する際には、まずは将来に求められるスキルや経験を定義した上で人材ポートフォリオを定める。その後、それぞれの職種において現状とのギャップを測定する。ある事例では、将来の人材ポートフォリオにおいてプロジェクトマネジャーが145人必要だったのに対して、現状で適合率80%以上の従業員は120人。この場合、ギャップは25人となる。ただし、適合率が50~80%の従業員が25人在籍しており、これを足せば不足はない。この場合は、配置転換を中心とした人員計画にすればよい。

 これに対して、人材ポートフォリオで174人が必要なデータサイエンティストでは、適合率80%以上の人材が70人でギャップは104人。適合率50~80%の従業員を合わせても67人が不足していた。この場合は、人数が大幅に足りないので採用中心の戦略にする。将来に128人必要なエンジニアでは、適合率50%以上の従業員が124人だった。不足人数がわずか4人なので、この場合は育成中心の戦略とする。SWPを成功に導くための秘訣を齋藤氏は「プランニングの後に、PDCAサイクルを回しながら、将来の目的に向かってデータを分析することが求められる」と説いた。

 PwCコンサルティングでは人事部門のデータ活用を支援するために、独自のHRデータベース「Saratoga」を活用したベンチマークレポートを提供している。国内外企業の業種や規模などのデータをもとに、各社の要員数・人件費の位置づけを明確にするベンチマークレポートだ。ベンチマークレポートの作成に必要なデータを提供した企業には、このレポートを無償で提供しているという。齋藤氏は「お客様の人材戦略の立案に貢献していきたい」と語る。