今回、取材した新生銀行はグループ全体の女性管理職比率18%と金融業界平均13.3%[注1]を上回るなど、2000年代からいち早く女性活躍を推進する。コロナ禍による環境の激変を経てSBIグループと統合、2022年2月からは新しい経営体制もスタートした。「多様性を受け入れ、違う文化を融合させてシナジーを生み、価値共創する組織」に向けた女性活躍推進の取り組みを聞く。

 新生銀行ではリーマンショックで見直す期間があったものの、2000年代から女性活躍推進に取り組んできた。2018年には法人ビジネスユニット長が委員長を務めるグループ女性活躍委員会を設立し、ダイバーシティを経営戦略として推進している。例えば、グローバルで推進する国連のWEPs(女性のエンパワーメント原則)に署名、30% Club Japanにも参画する。政府による各種認証[注2]の取得のほか、2020年に掲げたグループ共通の女性管理職比率18%という目標を早々に達成した。今回は特に、①企業のビジョン・目標の明確化、④パイプラインを意識した育成、⑦社内外広報を強め社員に浸透させる、というポイントを中心に話を聞いた。

[注1]厚生労働省「産業ごとの管理職に占める女性労働者の割合の平均値」 [注2]厚生労働省による「くるみん認定」の取得、経済産業省による令和3年度「なでしこ銘柄」に選定
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ダイバーシティ推進は経営戦略

 女性活躍推進の先進企業である新生銀行にも、実は苦い経験があった。2000年、外資系投資ファンドの出資を受けて新生銀行が発足した当時、一足飛びに女性管理職登用をしていこうとしたことだ。東京・内幸町の旧本社ビルに社内保育所を作り、多くの女性社員を管理職へと大抜擢も行った。「中途採用者を含め高い専門性を有するもマネジメント経験が足りない社員が管理職に就くこともあった。一時的に女性管理職の人数は増えたものの、十分な活躍が果たせず退職してしまう例もあった。社内保育所があっても実際に利用できる社員が限られるといった現実があり、昇格した社員へのサポートも足りていなかった反省がある。こうした経験から、選抜・育成し、活躍できるようにしっかりサポートする現在の取り組みにつながっている」と、西村陽子グループ人事部セクションヘッド兼ダイバーシティ推進室長は話す。

 この経験をもとに2016年の第3次中期経営計画では人事課題を網羅的に洗い出し、その中でダイバーシティ・女性活躍推進も重要課題として認識されるようになった。当時は、事業部門に人事権があったことで、部門ごとに人材を抱え込んでしまうサイロ化が起こっていたため、人材ローテーションで育成していく方針に転換。人事機能をグループ人事に集約していった。

西村 陽子(にしむら・ようこ)氏
西村 陽子(にしむら・ようこ)氏
新生銀行 グループ人事部 セクションヘッド 兼ダイバーシティ推進室長 2019年新生銀行入社。グループ人事部人事戦略担当として、ダイバーシティ&インクルージョン、健康経営・ウェルビーイングを軸に、多様な人材の活躍、柔軟な働き方の実現、多様なキャリアの推進・活用に資する人事戦略の立案、人事制度の導入、意識改革などを担当。2021年4月より現職。

 背景には、金融ビジネスそのものの変革がある。単独の銀行業務ではなく、グループの金融内異種事業の有機的連携によって、顧客目線に立って広く金融サービスを提供していくにはグループ一体の経営が重要だと工藤英之社長(当時)は打ち出した。「多様性の実現とその尊重は、経営戦略の一つ。出身業界や価値観の異なるグループ企業の社員など、多様な人が集まることによって、『違い』から生まれる新しい『切り口』を尊重する。違いを組み合わることで、単純な合算を超える価値を生み出そうしている。その実現のために、受容的・包摂的(inclusive)なマインドセットを大切にすることを重視する。女性活躍推進もグループ一体で取り組みを進めてきた」(西村氏)。

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