鉄道事業を祖業とし(2019年に東急電鉄を分社化)、交通、不動産、生活サービス、ホテル・リゾートなど幅広い事業を展開。グループ社数は230余に及ぶ。2015年の中期経営計画にダイバーシティマネジメント(多様性を生かす組織づくり)を掲げて以来、女性活躍推進をはじめとしたダイバーシティ推進に取り組んできた。現在、働く時間や場所を社員が主体的に選択できるようにしたり、自身の課題感にあわせて学びたいものを選べる選択型研修プログラムを拡充したりするなど、多様化する社員の「個」を重視し、その最大化を支援する人事施策を進めている。

 東急は2023年度末に女性管理職比率10%以上、男性育休取得率100%を目標とする。2021年度末時点の女性管理職比率は8.9%と運輸業平均の4.2%を上回る[注1]。また経済産業省による「なでしこ銘柄」、同「プライム100選」などにも選定されている。今回は、②能力を発揮・評価できる仕組みづくり、③現場と経営を繋げる推進体制の構築、④管理職パイプラインを意識して、段階ごとに着実に継続して行う、⑦社内外広報を強め、社員に浸透させる、を中心に話を聞いた。

[注1]厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく認定制度に係る基準における『平均値』について」
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社会環境の変化や事業拡大を背景に、ダイバーシティ推進に本腰を入れる

 ダイバーシティ推進に注力する背景には、女性の社会進出など1980年代後半からの社会環境の変化のほかに、同社の事業範囲の拡大がある。2004年頃からは各事業に関わる専門人材の中途採用を本格開始しており、生え抜きだけでない多様な人材をマネジメントしていく必要性が高まってきた。

 そこで、2013年に人事、キャリア開発、労務などを横断する形でダイバーシティプロジェクトを立ち上げ、翌2014年には専任部署を設立した。「ダイバーシティの幅は広いが、その第一歩として女性社員の活躍支援に取り組んできた」と人材戦略室労務企画グループ統括部長の山下有一氏は話す。

山下 有一 氏
山下 有一 氏
東急 人材戦略室 労務企画グループ 統括部長 1995年東京急行電鉄(現東急)入社。人事・労務部門、2度の駐在(北米、東南アジア)を含む海外事業部門を経て、2020年2月より現職。(撮影:川田雅宏)

 従来は安全第一と事故防止をモットーとする鉄道会社として、生え抜き男性社員の上意下達によるピラミッド型の組織だったが、1988年より女性総合職の採用を開始。その後も着実に女性の採用を進め、2021年度末時点で女性従業員比率は41.4%となった。同社は、総合職で新卒入社した社員に対し、入社後1年間全寮制教育を実施する。男女差なく寮生活を送り、共に学ぶ。

 新卒採用では数年前からエントリーシートの性別記入欄を廃止した。「性別ごとの採用数は設定しておらず、結果として女性の採用人数が多かった年もある」(山下氏)。採用後は本人の希望を踏まえて配属するが、「電気や土木などの分野は女性が少なく、その結果女性社員が少ない部門もある。女性社員の能力ではなく人的ネットワークがつくられていないことが問題だ 。そのため、女性社員は積極的に社外研修に派遣し、社内外で女性社員のネットワークを作れるようにしている」と山下氏は力を込める。