経営環境が激変する中で、生産性とエンゲージメントの向上を目的に、人材戦略としてキャリア自律を掲げる企業が増えている。今回は、ゲーム理論の研究分野の手法を活用して、これを実現したシスメックスの取り組みを紹介する。(協力:ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会)

従業員が自分でキャリアを選べる世界をつくりたい

 「ジョブ型人事制度の枠組みの中で、自分のキャリアを自分で選べる世界をつくりたかった」。こう語るのは、シスメックスで人事本部長を務める前田真吾氏だ。同社は、医療の発展と人々の健やかな暮らしへの貢献を目指して、臨床検査機器、検査用試薬ならびに関連ソフトウエアなどの開発・製造・販売・輸出入を行っている。売上高の約85%、従業員の約60%を国外が占めているというグローバル企業だ。売上高は1995年度に約300億円だったものが、今や3000億円超と急成長している。

前田 真吾 氏
前田 真吾 氏
シスメックス 人事本部・人事本部長(写真提供:シスメックス)

 同社は、2020年4月に管理職と専門職へジョブ型の人事制度を適用し、2021年10月から一般従業員へ対象を広げている。人事本部の松井有沙氏は「人事の側面では、急成長したがゆえのひずみを解消するためだ」と語る。具体的には、(1)従業員の多国籍化や価値観の変化に伴う日本型人材マネジメントの見直し、(2)従業員エンゲージメントの向上――の2つを大きな課題と捉えていた。特に(2)では、より専門性を重視する若年層のエンゲージメントを向上させることが重要な課題だった。これらを解決するために、ジョブ型雇用に加え、従業員が自分のキャリアを自分で選べるような仕組みが実現できないかと思案していたという。