コクヨが新オフィスで働く約1000人の全従業員を対象として、行動データを分析することによって、生産性を向上するためのオフィス改革に取り組んでいる。オフィス内に設置したビーコン(電波受発信器)と従業員が持ち歩くスマートフォンを連携させて、詳細な位置情報を取得する。このデータとパルスサーベイを掛け合わせた分析にも取り組んでいる。

「働き方の実験場」で従業員の行動を分析

 コクヨは2021年2月に、JR品川駅(東京・港)近くに「働き方の実験場」を狙いとする新オフィス「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」をグランドオープンした。このオフィス内に、従業員の詳細な行動データを収集・分析する仕組みを構築した。分析対象は、THE CAMPUSで働く約1000人の全従業員だ。

 今回の取り組みを主導した伊藤毅氏は「コロナ禍で多くの企業に在宅勤務やリモート勤務が浸透してきた。オフィス設計や家具を手がける当社としては、オフィスの在り方を見極めるために詳細な行動分析を行いたいと考えた」と説明する。最終的には、従業員が活き活きと働けるようなオフィス環境を作ることが目標だ。

 THE CAMPUSのプロジェクトでは当初、行動分析を実施する計画はなかった。コロナ禍で在宅勤務が広がったことで、これまで計画していたコワーキングスペースの拡充など設計の見直しが必要になった。そこで、2020年6月にTHE CAMPUSのプロジェクトを再定義。その中で、伊藤氏が経営陣に従業員の行動を分析したいと訴えた。「経営陣にも行動分析の重要性を理解していただき、ゴーサインが出た」(伊藤氏)という。

 従来のオフィスでもWi-FiとノートPCを使った仕組みで15~30メートルのメッシュ(アクセスポイント単位)で位置情報を取得する仕組みを作っていたが、今回はより精緻な位置情報を取得できるようにした。というのも、THE CAMPUSでは業務上の様々な活動に応じて仕事をする場所や時間を自由に選べる働き方である「ABW(アクティビティー・ベースド・ワーキング)」を採用しているからだ。

 ABWの考え方をベースにフロアごとに設置しているオフィス家具は異なる。そのため、家具の単位で行動を分析したいと考えたという。ABWは、一般的には個人の生産性を向上させる取り組みだと捉えられているが、伊藤氏は「チームや組織の活動にどのような影響があるかを確かめたかった」と語る。

伊藤 毅 氏
伊藤 毅 氏
コクヨ ファニチャー事業本部 スペースソリューション本部 ワークスタイルイノベーション部 コンサルティング第1グループ グループリーダー ワークスタイルコンサルタント