本田技研工業では、多様な現場ニーズへの支援や現場工数の削減に向けて、よりアジャイルに対応していくために人事専用のデータ・ウエアハウスを構築している。データ・ウエアハウスを中核としたピープルアナリティクスの取り組みも加速している。

100年に一度の変革期に人事はどう向き合っていくか

 自動車業界は現在、EV(電気自動車)シフトと運転支援技術の進展で100年に一度ともいわれる大変革期にある。各社でBEV(Battery Electric Vehicle)化が進めば収益性が低下し、差別化も難しくなると予想される。また、所有から利用へ消費者モデルがシフトし、体験価値を求める志向へ変わっていく。社内では環境面の配慮からSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みや人的資本経営、ウェルビーイングへの意識も高まっている。

 こうした経営環境の変化から、今必要な武器としてピープルアナリティクスの取り込みを始めた背景がある。人事のデジタル化とアナリティクスにおける企画・運営の中心人物である鈴木翔氏は「真の変革を遂げるには、ヒト領域(組織・ヒト)も、既存を踏まえながら新規を織り交ぜていくスピードを加速していき、常にベストミックスの状態を追い続けていく必要があると思っています。そのためには、従来の発想・やり方では到底、回転数が足りません」と強調する。全社の変革を加速するために、ヒト領域の変革を実現するのが人事部の役目だと考えたという。

 アナリティクスに取り組む背景には、鈴木氏が長年の間、抱えていた課題意識もある。これを同氏は次のように説明する。

「自分の仕事が下流だったとしても、必ず上流は存在します。川のように仕事はつながっており、そこには必ず戦略的な意思決定とそのトリガーとなるデータが存在します。しかし、仕事の分業化が進んだ今では、それが下流につながってこないことが課題となっています。データは生き物であり、下流で扱うデータがなぜこの形となるのか。その当時は知るすべがなく違和感を抱いていました。そのため、上流から下流までのデータをひと続きで見える化できる仕組みが欲しいと、2007年の入社当初から考えていました」

鈴木 翔 氏
鈴木 翔 氏
本田技研工業 人事・コーポレートガバナンス統括部 人事部 人事DX推進課 主任 デジタルHRコーディネーター(撮影:川田 雅宏)