社員が仕事をする席を自由に選べる「フリーアドレス制」を導入すると、賃借料の低減に加え、他部署の社員との交流が増え、仕事の創造性が高まるというメリットを耳にすることが多い。一方で社員の孤独感を高めるリスクも指摘される。解決法はあるのか。

 本連載では、日本で最近耳にする人事関連の仕組みや概念を取り上げていく。実際に、日本企業で新しい仕組みや概念を取り入れる際、一般に広がっている認識(=都市伝説)を真に受けると、うまく運営できないことが多い。それは、もっともらしい都市伝説が、仕組み本来の狙いや組織の実態とはズレがあるからだ。半導体製造装置メーカーで、人事課長兼女性活躍推進プロジェクトリーダーを務める架空の女性、佐々木さんの取り組みを通じて、読者のみなさんに、人事の都市伝説への挑戦を紹介したい。

 第2回に取り上げるテーマは、「オフィスのフリーアドレス制」。これまでの固定席を止め、社員が仕事をする席を自由に選べる「フリーアドレス制」にすると、オフィスの床面積の削減を通じて賃借料を下げられるだけでなく、これまで接点が少なかった他部署の社員との交流が増え、仕事の創造性が高まるというメリットを耳にする。新型コロナ感染の広がりで、在宅勤務を取り入れる企業が増えたことで、今後オフィスのあり方を見直す日本企業が増えると予想される。果たして、オフィスのフリーアドレス制は、社員間の交流を増やし、仕事の創造性を高める効果はあるのだろうか。

(写真:123RF)
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リモートワークを取り入れた企業の3割がオフィス縮小を検討

 

 2年以上続く新型コロナ感染の広がりから、日本でも多くの会社がリモートワークを取り入れた。NRIセキュアテクノロジーズが行った調査(2021年10月~11月)では、日本の回答企業全体の7割超(70.1%)が、コロナ感染状況が収まった後も、在宅勤務を続ける意向を示している。

 リモートワークが定着すると、職場で働く社員の数が減り、企業はオフィス面積を見直すことを迫られる。ザイマックス不動産総合研究所の調査(2021年7月)によると、在宅勤務を取り入れた企業全体の24%が、オフィス面積を縮小する意向を示している。同比率は、在宅勤務を取り入れていない企業では2%に留まる。ヤフーは、2021年11月までに、都内のオフィス面積を約4割減らした。LIXILは2022年8月の本社移転に伴い、オフィス面積を約9割減らす計画だ。

 大企業の本社面積の削減は、本社が集積する都内のオフィス賃料相場に影響を及ぼす。日本経済新聞社の調査(2022年5月)によると、都内の既存ビル(築後1年以上のビル)の2月時点の賃料指数は、上期として2011年以来11年ぶりに下がった。

 今後リモートワークが定着すると、働く場所や時間の柔軟性が高まることで、社員の働き方も変化することが予想される。そこで、オフィス面積の見直しを通じて、賃料負担を下げるだけでなく、オフィスでの働き方も見直したいという考えが、企業に広がるだろう。フリーアドレス制が広まっているのはこのような背景がある。