「人と組織が共に成長するイノベーティブな社会のために」をメインテーマとした「日経ビジネス LIVE 2022 Summer」が6月22日から6月24日までの3日間、オンラインで開催された。各日のサブテーマは、それぞれ「経営」「組織」「人財」。「組織」ステアリングコミッティ(運営委員会)によるパネルディスカッションの模様を2回に分けてリポートする。(構成:加納 美紀、撮影:川田 雅宏)

前編はこちら

若手は部長になりたくない!?

日経ビジネスLIVE 2022 Summer「組織」ステアリングコミッティ

【座長】
日揮ホールディングス 専務執行役員 CHRO・CDO 花田 琢也 氏
【メンバー】
リコー コーポレート上席執行役員 CHRO 瀬戸 まゆ子 氏
サイバーエージェント 常務執行役員 CHO 曽山 哲人 氏
学習院大学 経済学部 経営学科 教授 守島 基博 氏

花田琢也氏(以下、花田):リコーではマネジャーのプロを育成する「マネジャーカレッジ」を立ち上げたそうですが、そもそもリコーでは部長になりたいという人は多いのでしょうか。

花田 琢也 氏
花田 琢也 氏
日揮ホールディングス 専務執行役員 CHRO・CDO

瀬戸まゆ子氏(以下、瀬戸):男女の差もありますが、現実主義者だと「部長になっても大変なだけなのに、何がいいんですか」という人もいます。一方で「自分のやりたいことを、チームを使ってやりたい」という意欲的な人も多いんです。ただ、やることが多すぎて疲弊しているのも事実なので、これからマネジャーが部下をインクルーシブに育てていくためには会社のサポートも重要なポイントですね。

瀬戸 まゆ子 氏
瀬戸 まゆ子 氏
リコー コーポレート上席執行役員 CHRO

花田:なるほど。歌の「サビ」はたいてい最後にきますが、最近は「頭サビ」といってサビをなるべく前のほうに持ってくる傾向もあるようです。サイバーエージェントは、いろいろな場面でサビをうまく利かせる仕組みづくりに挑戦していると思います。部長職を魅力あるものにするためのチャレンジについてご披露いただけますか。

曽山哲人氏(以下、曽山):サイバーエージェントの役員会では、役員手前の部長というポジションにはどういう要素が必要なのか、という議論をしています。その結果は3つのキーワードに収れんされます。1つ目は成果をきちんと上げているかどうか。2つ目は社内外に影響を与えられるかどうか。経営に近づけば近づくほど社外との接点が増え、社会の状況把握を基に未来を作っていくことになるので、部下だけに影響力を持っていても務まらないからです。そして3つ目が人間性で、人望や人格と言い換えることもできます。その人の下で働きたいという人がどれぐらいいるか、ということですね。この3つがそろわないと部長や役員になるのは難しいので、部長候補として名前があがった人材に関しては、この3点について議論することがあります。

 具体的な取り組みについては、マンネリ化させないことを重視した内容になっています。部長職というのは、うまくはまると固定化しやすい側面もあるので、異動させることによって、よりよい決断ができると考えています。具体的には「ポスチョイ(正式名称は「ポスト・チョイス・Do」)」という名称で、部長クラスやトップ人材のポストを役員会で議論するんです。例えば「新規事業ですごく伸びそうな良いプロダクトができたから、法人営業のトップが欲しい」など、そのポストに対する人選の決議を役員会に諮るわけです。なぜかというと、部長クラスの異動は非常に揉めるからです。部長を引き抜くことが、会社のプラスと元の部門のマイナス、どちらが大きいのかを議論して、会社としても個人としてもプラスだったら異動をDoする(決める)わけです。

 「ポスチョイ」には情報が必要なので、先ほどご紹介したキャリアエージェント(社内ヘッドハンターチーム)の中のベテラン人材をサポートする「リーダーズエージェント」が活躍します。彼らは管理職や部長クラスの面談を担当し、それぞれの役員に提案する「差し込み会議」を開いています。例えば、広告事業担当役員に差し込み会議で「彼は非常に活躍しているから、もっと抜てきしたほうがいい。今の部署よりこの新規事業を担当するほうがいい」といった提言をするのです。各役員とリーダーズエージェントが3カ月に1回くらい差し込み会議を行っているので、役員会でポスチョイという全社横断の異動の議論になっても、議論が活性化しやすいです。我々はそうした流れを作っていますが、部長職の経験が長い社員たちからも、変化や挑戦に対して前向きな声が多く挙がっているので、さらにいいキャリアを作っていけるように頑張っているところです。

曽山 哲人 氏
曽山 哲人 氏
サイバーエージェント 常務執行役員 CHO