「人と組織が共に成長するイノベーティブな社会のために」をメインテーマとした「日経ビジネス LIVE 2022 Summer」が6月22日から6月24日までの3日間、オンラインで開催された。各日のサブテーマは、それぞれ「経営」「組織」「人財」。「経営」ステアリングコミッティ(運営委員会)によるパネルディスカッションの模様を2回に分けてリポートする。(構成:吉川 和宏、撮影:川田 雅宏)

人材版伊藤レポート2.0の要諦とは?

日経ビジネスLIVE 2022 Summer「経営」ステアリングコミッティ

【座長】
カゴメ 常務執行役員 CHO(最高人事責任者) 有沢 正人 氏
【メンバー】
カインズ 執行役員 CHRO 西田 政之 氏
経済産業省 産業人材課長、未来人材室長 島津 裕紀 氏
デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナー 古澤 哲也 氏
豊田通商 経営幹部 CHRO(最高人事責任者) 濱瀬 牧子 氏

有沢正人氏(以下、有沢):今日は、人的資本について経営の観点から皆さんとディスカッションしていきたいと思います。まずは、冒頭で経済産業省の島津さんから、人材版伊藤レポート2.0についてご説明いただけますでしょうか。

有沢 正人 氏
有沢 正人 氏
カゴメ 常務執行役員 CHO(最高人事責任者)

島津裕紀氏(以下、島津):経済産業省の島津と申します。早速ではございますけれども、私から人材版伊藤レポート2.0についてご説明させていただきます。

 2020年の9月に人材版伊藤レポートを公表しましたが、そこから大きな変化があったと考えています。1つ目が「デジタル化」「脱炭素化」「コロナ禍」といった環境変化です。これらの変化に伴って、日本企業にとって人的資本に関する課題がますます顕在化してきたと思います。例えば、デジタルスキルの習得が間に合わないので、社内でコミュニケーションの齟齬(そご)が生じるとか、脱炭素化の進展によって、化石燃料を使用する分野では従業員が自分のスキルに不安を持っているといったような風景を、皆様も社内で見かけていらっしゃるのではないでしょうか。

 2つ目が、海外における人的資本情報の開示に向けた動きが加速していることです。昨年11月には、IFRS(国際会計基準)財団が国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を設立して、投資家の判断に重要な非財務情報について開示基準の設定を進めていく方針であることが明らかになりました。さらに、国内でも昨年6月にコーポレートガバナンス・コードが改定されて、人的資本に関する記載が盛り込まれました。

 こういった環境変化が起きている中で、まずは2020年9月に公表した最初の人材版伊藤レポートが明らかにしたことを振り返りたいと思います。まず、人材版伊藤レポートでは、今後の変革の方向性を示しています。経営陣と取締役会、投資家のそれぞれの役割も明らかにしています。その上で経営陣が主導し、策定し、そして実行する人材戦略について、3つの視点と5つの共通要素というフレームワークを提示いたしました。

島津 裕紀 氏
島津 裕紀 氏
経済産業省 産業人材課長、未来人材室長