「コロナ禍でがん患者が減っている」――。東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 兼 がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長の中川恵一氏は、2022年3月4日に開催された「令和3年度 がん対策推進企業表彰式」の講演でこう切り出した(関連記事:治療と仕事の両立へ、企業のがん対策が続々

「進化する企業アクションとコロナで減る“がん患者”」と題した講演を行う東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 兼 がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長の中川恵一氏(写真:がん対策推進企業アクション事務局、以下同)
「進化する企業アクションとコロナで減る“がん患者”」と題した講演を行う東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 兼 がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長の中川恵一氏(写真:がん対策推進企業アクション事務局、以下同)
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 同氏によると、新規のがん患者の数は、データによって異なるが新型コロナウイルス感染症流行前と比べて、5~10%減少しているという。国立がん研究センターによると、今後15~20年でがん患者は増加すると予想されているが、新型コロナウイルスによってとりわけがん検診の受診率が減り、見かけ上がん患者が減る状況が進んでいるというわけだ。「大変恐ろしい状況」と同氏は懸念する。

 国立がん研究センターの2018年の発表によると、日本人の場合、男性では65.0%、女性では50.2%が生涯に何らかのがんに罹患するとされる。職場では会社員の死因の約半数ががんであり、病死に限ると、在職中に社員が亡くなる原因の9割ががんだという。つまり「働く人にとってはがんが大きな壁になり、がん対策は経営課題だ」(同氏)。

 現在、日本のがんの死亡率は米国の2倍である。先進国の中では、がんの死亡数が増え続けているのは「日本くらい」だと同氏は話す。そして、日本ではがんの欧米化が進んでいるという。これまでは日本人が最も罹患するがんは胃がんだったが、ピロリ菌の感染率が減少したことなどが原因で胃がんにかかる人が大きく減り、欧米で罹患する人が多い大腸がんが増えている。

 肥満や運動不足など原因とみられ、今や大腸がんは国内で最も罹患する人が多いがんになった。大腸がんによる年間の死亡者は、日本が米国を上回るほどだという。その原因の一つが、米国の半分程度しかない、がん検診受診率の低さだ。

 がんが診断可能な1cmの大きさになるには、20年かかるとされている。早期がんとは、1~2cmの間に見つかったがんのことで、この大きさでは症状が出ることはまずない。1cmのがんは、わずか1~2年の間に2cmになるとされる。つまり、早期がんを発見するには、例え体調が万全であっても定期的に検査する必要があるというわけだ。