企業ごとに組織された日本の組合は、強硬に賃上げ闘争をすれば業績が悪化し、社員の待遇がダウンするパラドックスにはまる。欧州型の業界横断組合を作り、社内は従業員代表が社内の雇用・労働に関わる方針を経営と協議するという形にすれば、組合は待遇改善交渉力を高め、賃金アップを実現できる可能性が高まる。

(写真:123RF)
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 日本人の給与が上がらない問題を取り上げてきたこの連載。その原因は、以下の4つだと分かっただろう。

1. 金融政策
2. 非正規問題
3. 労働組合の形
4. 中小企業問題

 2の非正規労働者の差別的低給与については、すでに始まった絶望的な人材不足により、解決される方向へと進んでいる。この流れを加速させるために、派遣労働者の横断組合を作るべきと書いた。今回は3の労働組合の形について考えていく。

60年前から探っていた「業界横断組合」への道

 日本企業の組合は個社単位となっているため、強硬に賃上げ闘争をすれば、自社だけが経営条件を悪化させて業績が落ち込み、結局社員の待遇がダウンするというパラドックスにはまる。だから昇給闘争が弱くなる。横断型組合を作り、同一職務や同一産業に従事する人たちが、あまねく束になって、経営者側と協議をするという体制を作らなければ、賃上げ闘争は成就しない。そうすれば、ライバル会社も一緒にストライキをするため、自社の経営だけが悪化するわけではなくなる。経営側からしても、他社と同じだけ賃上げをするなら、価格転嫁も足並みをそろえて行える。こうしたことから、賃金アップ→価格アップの良きサイクルが出来上がっていくのだ。

 ただし。こうした欧州型の横断組合はなかなかうまく作れない。欧州でそれが成り立ったのは、中世から連綿と続くギルド(同職組合)があったからであり、ギルドが未成立だった革命前のロシアでは、日本同様「企業内組合」しかできなかった。ギルドの歴史がない新大陸(米・豪)も同様で、横断力は弱い。

 日本は、幾度もこの難題に挑戦し続けた。たとえば、1960年発表の「所得倍増計画」の一節を見てみよう。

「労務管理制度も年功序列的な制度から職能に応じた労務管理制度へと進化して行くであろう。それは年功序列制度がややもすると若くして能力のある者の不満意識を生み出す面があるとともに、大過なく企業に勤めれば俸給も上昇してゆくことから創意に欠ける労働力を生み出す面がある(中略)労務管理体制の変化は、賃金、雇用の企業別封鎖性をこえて、同一労働同一賃金原則の浸透、労働移動の円滑化をもたらし、労働組合の組織も産業別あるいは地域別のものとなる一つの条件が生まれてくるであろう」

 どうだろう。年功序列の撤廃、雇用の企業別封鎖性の打破、同一労働同一賃金原則の浸透と並んで、労働組合の産業別・地域別編成も大きなテーマとなっている。皮肉なのは、この4テーマ揃って、60余年経過した現在も全くフレッシュな課題として騒がれ続けていることだ。

 さあ、どうやってこの古くて新しい「社外まで連なる組合組織」というものを作ればいいか。まずは、欧州の労使協議について、もう一度振り返りながら、ヒントとなるポイントを挙げていくことにしよう。

 これは、連合芳野会長への本格的なラブレターとなる。