ANAあきんど(東京都中央区)、損害保険ジャパン(東京都新宿区)、ワイズスタッフ(奈良県生駒市)の3社は2022年3月30日、新しい働き方の一つである「スポーツワーケーション」の客観的な効果について実証実験の結果を発表した。スポーツワーケーションにより、仕事のパフォーマンスが上がるという客観的データが一定程度示されたという。

 スポーツワーケーションは、「ワーケーション」に「スポーツ」を掛け合わせた造語で、旅先など普段とは異なる環境で働きながら軽い運動やスポーツを取り入れた余暇活動を行うもの。コロナ禍に伴う新しい生活様式(ニューノーマル)に対応した働き方としてワーケーションが注目される一方、客観的に効果を示すモデルが不在で、効用に関する定量的な分析や理論モデルの確立がなされていなかった。

スポーツワーケーションでカーリングを体験する様子と執務中の様子(出所:2点ともANAあきんど)
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スポーツワーケーションでカーリングを体験する様子と執務中の様子(出所:2点ともANAあきんど)
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スポーツワーケーションでカーリングを体験する様子と執務中の様子(出所:2点ともANAあきんど)

 実証実験はスポーツワーケーション実施組9人と通常勤務組35人の2群に分けて実施し、それぞれストレスおよび生産性への影響に関するデータを計測した。スポーツワーケーション実施組は、5人が北海道北見市に宿泊して余暇にカーリングを体験し、残り4人は北海道斜里町に宿泊してトレッキングを楽しんだ。実施期間は2021年10月3日から10月22日までの約3週間。このうち、スポーツワーケーションの実施期間は10月10日から10月15日までの6日間である。

 データの計測には、日立製作所グループ会社のハピネスプラネット(東京都国分寺市)が提供するスマートフォンアプリ「Happiness Planet」、SOMPOホールディングスの100%子会社SOMPO Light Vortex(東京都新宿区)が提供するスマートフォンアプリ「LightChecker」、米Fitbitが販売する腕時計型ウエアラブル端末「Fitbit Charge2」を使用した。

 Happiness Planetは、生産性と関係が深い「心の資本(一人ひとりが持つ前向きな心のエネルギー)」と「ハピネス関係度(周囲の人とのポジティブな関係性、心理的安全性)」を計測するために用いた。計測結果では、スポーツワーケーション実施組は心の資本、ハピネス関係度とも上昇し、スポーツワーケーションの終了後もその傾向が維持されたとしている。

Happiness Planetによる「ハピネス関係度」と「心の資本」の計測結果。「SW群」はスポーツワーケーション実施組、「TK群」は通常勤務組を指す(出所:損害保険ジャパン)
Happiness Planetによる「ハピネス関係度」と「心の資本」の計測結果。「SW群」はスポーツワーケーション実施組、「TK群」は通常勤務組を指す(出所:損害保険ジャパン)
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 LightCheckerによるストレスの計測結果では、スポーツワーケーション実施組は通常勤務組と比べて就業後のストレスが低い傾向を示した。Fitbit Charge2による歩数と睡眠時間の計測では、スポーツワーケーション実施組に就業後のストレスが低い傾向や歩数の増加が見られた。ただし、いずれの結果も統計上の有意差は認められなかったとしている。

 このほかウェブによるアンケート調査では、スポーツワーケーション実施組は心理的にも仕事から離れ、仕事とオフというメリハリを持つようになったとし、定期的な運動実施の重要性をより強く感じるようになり、睡眠状況やストレスにも改善傾向が見られたという。

 実証実験は大学や日本労働科学学会のサポートを得て実施した。今後、国・自治体の政策や企業、大学などと連携し、地方でのテレワーク、ワーケーションの科学的な効用研究を行っていく。(執筆:工藤 宗介=技術ライター)

実証実験の実施体制(出所:損害保険ジャパン)
実証実験の実施体制(出所:損害保険ジャパン)
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「新・公民連携最前線」2022年4月7日掲載記事を転載